題名

三千歳(みちとせ)

本名題

忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

(資料の題名『忍逢春雪解』)

(河竹其水述作)

『冴返る〔合〕春の寒さに降雨も〔合〕暮ていつしか雪となり、上野の鐘の音も凍る〔合〕細き流れの幾曲り、末は田川へ入谷村〔合〕
『廓へ近き畦道も、右か左か白妙に〔合〕往来の無を幸ひと〔合〕人目を忍び佇みて〔合〕
『雪をよすがに直次郎〔合〕確かに爰と目覚えの、門の扉へ立寄れば、風に鳴子の音高く〔合〕驚く折から新造が、灯携へ立出て
『さし足なして千代春が扉へよりて声ひそめ
『気転利して奥と口、互いに心合鍵に、扉を開て伴ふ折抦、門の外には丑松が、内の容子を窺ひて、一人点頭き雪道を、飛が如くに急ぎ行く〔合〕晴れて逢はれぬ恋中に〔合〕人に心を奥の間より〔合〕知らせ嬉しく三千歳が、飛立つばかり立出て、訳も涙に縋りつき〔合〕
『廓に馴たる新造が、話の邪魔と次の間へ、粹を通して入りにける
『跡には二人差合も〔合〕涙ぬぐふて三千歳が、恨めしさうに顔を見て〔合〕
『僅か離れて居てさへも
『一日逢はねば千日の、思ひに私や患ふて〔合〕針や薬の験さへ、泣の涙に紙ぬらし〔合〕枕に結ぶ夢さめて、いとゞ思ひの十寸鏡〔合〕
『見る度毎に面痩て、どうで長らへ居らねば、殺して行て下さんせと、男に縋り歎くにぞ
『今更言て返らぬが、悪事を為てお仕置を、受れば先祖代々の、墓へ這入ぬ身の上に
『これが頼みと手を取て、倶に涙に暮にける
『男も愚痴に搦まれて、持余したる折柄に〔合〕始終を聞て寮番の〔合〕喜兵衛は一間を立出て
『斯いふ内にも寸善尺魔、障りのなき内さあ/\/\
『と言へど此方は水鳥の、浮寐の床の水離れ、葭芦原を立兼れば〔合〕
『実に桓山の悲しみも、斯やと許り降雪に、積る思ひぞ残しける

分類番号

00-1331211-m2t2t5s4-0001
データ入力日:2016/05/17

清元 三千歳 歌詞