題名

傾城道成寺(けいせいどうじょうじ)

本名題

無間鐘新道成寺(むげんのかねしんどうじょうじ)

別題

中山道成寺,新道成寺(なかやまどうじょうじ,しんどうじょうじ)

詞章

『徳川文芸類聚』第10 俗曲下 『歌撰集』

(目次の題名『新道成寺』本文の題名『無間の鐘新道成寺(傾城道成寺)』)

〔歌〕「われは此世になきがらのそのまゝならぬその中にかはい男をしやばにをき思ひがけなきしでの山まよふが中のまよひとはちゞに物こそかなしけれ仏の道のうとければつらいつとめのをくる身の月はほどなく入汐の/\けぶりみちくる小松ばらさんげにつみもはれなんと中山寺にまいりけり
「嬉しやさらば舞んとてあれにまします宮人のゑぼしをしばしかりにきてすでにひやうしをはじめけり
「花のほかには松ばかりくれそめてかねやひゞくらんいろは匂へど散ぬるを我世たれぞつねならん人里とをきかねのこゑ諸行むじやうの世り中に恋はまことのぼたいのみちへひかるゝまでのいと竹やわれもむかしはみな人ごとにむすめ/\とたくさんそふにいふてたもんなてならひならひ琴もおぼへ物ぬひならひやがてとのごとそひねのまくらふたりねがちにひきしめていとそうぞうしき風のまに霞たなびくみねの雲いらかならべし此寺は小夜の中山とうけたまはりはじめてがらん成就のあまねく十方かゞやけばとて光明山とは名付たり山でらの春のゆふぐれきてみれば入相のかねに花ぞ散ける/\さる程に/\寺々のかね月をち鳥啼いて霜雪天にみちしほほどなく此てらの江村の漁火うれひにたいし人々ねむればよきひまぞとたちそふやうにねらひよりつかんとせしが思へばこのかねうらめしやとて龍頭に手をかけ飛かと見へしが引かついでうせにけり
〔切のだん〕「まさごの数はつくるとも行者の法力つくべきかとみな一同に声をあげ東方にござんぜ明王西方ゐとく明王天子北方こんがうやしやみやう王
「中央大日不動明王なまぐさまんだばさらせんだまかろしやなそわたやそわか
「ひだりの御手に三日三夜右の御手に三日三夜あはせて六日に一日まして
「七日御きねん御経どくじゆのきどくにまかせがうまの利剣はなんのこつちや/\ちからによりてうんだら
「たかんまてうがせつしやとく大ちゑちがしんしやそくしん成仏
「祈りければ
「いのり祈られしやむづかしい事どもたんせい出しひたいに汗を玉のじゆずすりみなこゑそろへつかねど此かねひゞきいでひかねど此鐘おどるぞと見へし程なくしゆろうに引上たり
「朧月影もさだかにしどけなくやまぶきの瀬にほのみへこづまなりふりほら/\春風さまはしのびの朝がよい小川浅ければすそがぬれそろよのふさ/\つまもぬれそろよ/\物にくるふやうき涙まぶの男はつらにくやだいてねたときやわれならでほかの女郎にやあはぬといふてだましくさつたがにくやゑゝならぬせいもんくつされだましはせぬがひくにひかれぬひがあればそれはねてから其いひわけをせふぞいのあゝいやらしい何ぞいの昔のあくせうしたらいでのふ今のしなしはおかしやな。是は過にし言の葉の
〔上〕「あゝ夜昼となきくるしみは無間の鐘。おそろしやくるしむくげんちか付て/\来世は六つのせめ鼓うたふよ。いづく鼓は偽の契仇なる爪ごとの引はなれいづくにか我思ふ/\忍びねのやわら/\うたふよ/\。ましてめいどのしゆらだいこ剣をひつしとうへならべ罪人をおひまはしがんせきせなにゆひ付られて峯よりどうど突おとさるればほねはみぢんにくだかれて風に木のはの散ごとく。きしやうせいしの数々に恨のからす集りて鉄の嘴をならし銅の爪をとぎ立て追廻し/\。流れのつみとが地ごぐの有さま花も一時月の光もうつるや夢のうつるや夢の定なきこそあさましや。

タグ

#道成寺物

分類番号

00-2310000-k4a2s4a2-0003
データ入力日:2016/09/13

長唄 傾城道成寺 歌詞