題名

千鳥玉川(ちどりのたまがわ)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

『夕されば、汐風こして陸奥の〔合〕野さへ山さへ〔合〕色付て〔合〕恋に時雨の名所も合い遇玉川の逢瀬さへ、忍ぶ文字摺誰故に、乱れ心の狂ふらん
『しどけなりよし〔合〕振もよく、ふり担げたる笹の葉の、ひと夜の契ゆかしやと、及ばぬねがひ求女塚、かの水鳥のかけ言葉、それも届かで朽果し、その錦木の数ならで、是ぞ千鳥の物狂ひ
『アヽ恋せまい迷ふまい
『かはす枕は荒磯に、船打寄する浪枕、苫を敷寐の梶枕、それさへあるに如何なれば、逢は厭なり思ふはならで、ほんに浮世の恨めしや、風に尾花の招かれて、心も奥の道柴は、雲又雲の果しなや、狂ひ行方も松山浪越さじとは、よく/\な深い縁に引換えて、あれ宮城野の女夫坂、賎が伏屋に糸くり綿くり、くるり/\くるり/\、くるり/\/\/\と、廻り車の我ながら、見れば見かはす振の袖、袂ひかれて花見の戻り、惜しや形見の服沙もの落した、あたら物を中ちつくり、茶巾程紅染めにくゝつて端々に、白梅白浪白鷺を、縫せて今は由なや忘れ草
『夫は情の薄煙、厚い心を言うなら、譬はゞ新き新靭、八百や万の神かけし、お千代半兵衛が私語
『此の世ばかりか冥土の飛脚
『色故名さへ梅川が、散ると覚悟の中兵衛を、思ひお染と久松は、忍び/\の寐油を
『南無網島に浮名たつ、小春治兵衛が物思ひ、二世よりさきへ三勝が、半座をわけて半七と、はすのお花が恋中は、うれしん中ぢやないかいな
『水の出端のちぬ笹田、恋あらそひの水鳥も、いとゝ可愛の浪風に、さら/\ちゞに千鳥の思ひ羽に、狂ひ乱れて行く空の、彼所にしばし休ひぬ

分類番号

00-1331211-t2d5r2n5-0001
データ入力日:2016/05/17

清元 千鳥玉川 歌詞