題名

嫁菜摘(よめなつみ)

本名題

道行誰夕月(みちゆきとたれもゆうづき)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

(資料の題名『道行誰夕月』)
(資料目次に括弧書きで「おはや与兵衛」とある)
(資料の題名読み「みちゆきたれもゆうづき」)

『浮気黄鳥梅を捨て〔合〕
『隣歩きの戯歌も、胸にあたりの人目さへ、あやなき帯の凍解て
『見合す顔も今更に、おはや与兵衛は恥かしと、夕べの契〔合〕暗き身を、余所には知らで女夫ぢやと〔合〕噂も辛きみだけ苧や、麻苧と綽名もつゝましく〔合〕世継畷と聞からに、其の兄嫁と言訳も、涙ふりしく春雨に
『不図した事の間違で、斯うなつた二人が身の上、死なねばならぬと言ひながら、心中と浮名もたてば、尚々もつて済まぬ義理、お前はどうぞ生ながらへ、訳をとつくり兄者人へコレおはやさま
『復そんなこと言ふて下さんすか、なんぼ私が女子ぢやとて
『浮名は同じ罪科の〔合〕のがれぬ縁か露程も〔合〕互に訳も〔合〕難波江の、蘆の苅穂のひと夜さに〔合〕
『思ひ違のよしなしや、契し事は〔合〕薄く共
『心に嘘は情ない、流の果と〔合〕嘸や嘸
『おふくろ様のおさげすみ〔合〕
『十次兵衛様のお腹立〔合〕不義ぢやなけれど何とまあ、一人長らへ居られうぞ
『心の内を推量して
『とても因果と諦めて
『どうぞ一所に与兵衛さん
『ハテ何とせう是非がない、此の上は諸共に暮るを暫し
『いざとは言へど手もとらで、先へ立場を曲りがね渡しの方へと
〔二上り〕『こゝら在所にナアよいこの嫁菜〔合〕田芹摘むとて〔合〕畦道伝い〔合〕流飛越え一寸小褄を濡した、アヽしよんがいなア〔合〕
『あとにも軽き口拍子〔合〕身過世過や五六つ七つ〔合〕子供相手の商人が、サア取組だ〔合〕関と/\
『今が勧進大相撲〔合〕そりや濡髪に放駒〔合〕負けるなどつこいコリヤ/\/\/\〔合〕コリヤ可愛らしちよな娘、コレどうでんす
『オヤ〔合〕何しなさる置しやませ、見れば如才もなんぢやゝら〔合〕鴨や羽白は売りもせで〔合〕相撲取とはコリヤ可笑し、イヤ可愛鴉に〔合〕起されて、朝から晩までどつこい/\、足にまかせで気まかせに、蝶も遊ぶや若草に、引れ/\て来りける
『アヽこれ/\姉さん、見れば近所の娘御さうだが、草深い所に置くは惜いものだ、なんと江戸へ片付く気はごんせぬか
『そりやモウお江戸へは片付たいけれど、わし等がやうなものをどうして誰が
『イヤあるの、もし相談する気なら此の商人、なんとわしが女房に成気はごんせぬか
『オヤアノお前がオホヽヽヽヽ
『コレ/\こんな山水な商人だといつて、さう笑つたものぢやアあにエヽ見せたいな/\
『そりや何をへ
『おれが家をよ
『どんなで御座んすへ
『先やつがれが住家といつぱ、四方屋敷に棟高く〔合〕瑠璃の礎石珊瑚の梁〔合〕柱に蒔絵三重だすき、伽羅の欄間に花がつみ〔合〕釘隠しには黄金にて〔合〕蝶花形をと思ふたばかりさうゆかず
『九尺二間の裏家住、女房子にも家来にも〔合〕鼠の外は唯一人
『隣は按摩かた/\は煙管のつぶれと取換べにしよ〔合〕花売お婆に山ぶ殿〔合〕
『去程に茲にまた〔合〕大家のめい子まし/\て〔合〕思ひ染め茶の一張羅、つい綻びを〔合〕しほにして、その物差で惚れた気を
『つもつてどとぞ女房にと、取る手をはらひこれなもし、そんなちよ/\らは村方の、日待にこつそりつれ節で
『池のエヽ池の鰌奴が朝日に輝く夕日に棚引く、真菰の小蔭にひよいと出ちや〔合〕ぴよいとはね〔合〕二度さ出てはねたへ〔合〕
『はねたが何うした
『鰌と娘は
『はねるが賞翫
『さうだぞどつこい
『田舎踊のオヤ田舎踊の〔合〕可笑しらし、とぼけた色ぢや有べいにやア
『我を忘れし話のうしろへ、逃来る与兵衛をおわへるおはや、二人は此方に窺ふとも、知らずやう/\走りつき
『モシあれ程一所と約束して、誑して置て唯一人
『サア倶にはどうもと思ふ故、色々すれど此の上は是非に及ばぬ、よし心中と言はゞ言へ
『そんなら聞分け
『覚悟はよいか
『やれ待ちなせへ/\
『留ずとこの儘
『いやならぬ/\、もし訳は聞かねど添に添れず、心中で御座りませうが、さりとは悪い御了間
『死ずとどうぞ勘弁して
『それサ善は急げ悪は延ろだ、マア/\待つしやりませ/\
『ほんに江戸も田舎も色事の、果には二人心中とムヽそんならアノ此処辺にも
『サアしかも一昨年産土の、祭の晩げの事だモシ、離れまいぞと手サ引いて、死ぬ身もこはき
『藪の下〔合〕おとうか殿につまゝれて、夜つぴとぐるぐる道行に、常なき川をどんぶり/\こ〔合〕渡つて名代の小豆餅〔合〕
『蕎麦の馳走の挙句には、すつぺら坊主で朝風に〔合〕
『ひやいな命を生延て、目出度夫婦の道心坊
『我等は酒と女郎に、薬鑵で茹蛸手も足もぎつちり詰つた大晦日
『越すに越されぬ借銭の、淵へはまつて
『身を投ぎよか
『アヽ何うせうか正月は〔合〕雑煮も食つて〔合〕腹の春、命があればぢやごんせぬか
『鯨寄る磯虎伏す野辺も〔合〕エヽなんのいな〔合〕
『様と一所に暮そうなら〔合〕
『いかゞです〔合〕
『玉の台にや増しであろ
『その事/\〔合〕
『死で花実は〔合〕咲きやせまい
『ホウ南無三日が暮れた
『お二人さん
『異見を聞て暮六つの、鐘に打連れ急ぎ行く、見ず知らずの今の二人が、親切なるあの異見
『よう聞入れては居るけれど、ひと方ならぬ二人が身、又も妨げない内に
『さうぢやと既に草の上、露の命や奈何ならん/\

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

(目次の題名『道行誰夕月(おはや与兵衛)』本文の題名『〔おはや/与兵衛〕道行誰夕月』)

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

分類番号

00-1331211-y5m4n1t3-0001
データ入力日:2016/05/17

清元 嫁菜摘 歌詞