題名

子宝三番叟(こだからさんばそう)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第4編 常磐津集(明治42年)

『おゝさへ/\悦びありや/\、我悦びを此処より外へはやらじと思ふ、ハアヽ罷り出たる者は八幡大臣です、太郎冠者あるか
『ハアヽ御前に
『念なう早かつた
『太郎冠者と召るゝ故、随分物に罷り立つて候
『太郎冠者に尋ね度き事のあり、身は福人と見へ候か又徳人と見へ候か
『ドリヤ/\ハアヽ頼ふだる方は、天適福人と見受け候
『ヤレ/\目利かな/\、身共こそ福者にてある、其内にも子福者にて、子供十二人持ち候、上六人は瑠璃の様なる女子にて、下六人は玉の様なる男子にて候、其十二人の子供等を、車座にぐるりと直し置き、一度に呼ぶ様に名をつけて候
『実に/\目出たき御事かな、シテ其御名は何と御付候ぞ
『まつおつとりちがひおとよけさよたつ松ゐる松だんたらいなごにかいつくひつゝく火うち袋ぶら/\と付てあれ
『扨々珍しき御名にて候
『サレバ此十二人の子供等が、四季の遊びの面白さ
『それは目出度き御楽しみ、その若子達の御遊び、爰にてまなび御見せ候へ
『なか/\易き御事、先づ太郎冠者には元の座敷へおも/\と直り候へ
『某座敷へ直らうずる事、頼ふだる方の御まなびより易う候、ひらに御学び候へ
『平に直り候へ
『あゝらやうがましや、とう/\御始め候へ
『心得申て候
『佐保姫の霞長閑に明初て、今朝白々と富士の顔、うつる鏡の影添て、松と竹との二柱、賑ふ春の稚ごと、門に遣羽子すめる代に、風吹な尚吹な、金の団扇で追羽根せうとおしやる、つくや手毬の数へ歌、一つと言て如月の、種蒔く小田の紙詣り、振分髪のいたいけに、緋無垢は椿白無垢は、梅の莟の風車、くんるくる/\廻る日の、早鶏合雛遊び、妹脊変らぬ諸白髪、頂く軒に菖蒲葺く、幟兜の勇ましく、菖蒲うち合ふ形姿の、武きは尚も潔よく、隙ゆく駒の竹の尾に、鞭をくれゐ手綱かい繰りん/\/\、納涼にいその蛍狩、柳の水の影いそぐ、手に手を取りて鵲鳥の逢瀬を渡す天の川、笹一夜の散し書、さらさらさゝら団扇太鼓の拍子よく、皆撫子の手を揃へ、優しき声の張強く
〔二上り〕『せりやい申そはりやい申そ、せり合はり合石投いやよ、こちの踊はアヽ花踊、惚たら厶れ/\、惚てほの字の文書初て、似合ぬとても縁ぢやもの、其着綿の菊襲、薫る袖がき中もよくほたけ祭の
『とり/゛\に花を飾りしうちかけ匂ふ産神詣、黒髪に置く白雪の、降れや積れや降れや、招くや年の貢物、たへずかゝらぬ童幼の、ちくま遊びの千代かけて、千代に八千代にさゞれ石の、動かぬ御代こそ目出度けれ

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#三番叟物 #松羽目物

分類番号

00-1331200-k5d1k1r1-0001

音源(宣伝枠)


データ入力日:2016/05/17

常磐津 子宝三番叟 歌詞