題名

巽八景(たつみはっけい)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第4編 常磐津集(明治42年)

(立川焉馬述)

『大江戸とならぬ往昔の武蔵野の、尾花や招き寄たりし、張と意気地の深川や、因縁も長き永代の、帰帆も粋な送り船、その爪弾の絃による、情緒に身さへ入相の、後朝ならぬ山鐘も、ごんと佃の辻占に燃る焔炎の篝火や、せめて怨みて玉章を、薄墨に書く雁の文字、女子の念も通し矢の、届いて今は張弱く、いつか二人が仲町に、しつぽり濡る夜の雨、堅い石場の約束に、話は積る雪の肌、解て嬉しき胸の雲、吹払ふたる晴嵐は、辛気新地ぢやないかいな、洲崎の浦の浪越さじと盟ひしことも有明の、月の桂の男気は、定めかねたる秋の空、誑されたさの真実に、見下されたる櫓下、疑念晴し夕化粧、目元に照す紅の花、幾世契らん諸白髪、浮名巽の八景と、その一節を立川の、流れを筆に残しける

分類番号

00-1331200-t1t3m2h1-0001
データ入力日:2016/05/17

常磐津 巽八景 歌詞