梅の春(うめのはる)
『四方にめぐる扇巴や文車の、ゆるしの色も昨日今日、心ばかりは春霞〔合〕引も恥かし〔合〕爪しるし〔合〕雪の梅の門ほんのりと〔合〕匂ふ朝日は赤間なる〔合〕硯の海の〔合〕青畳、文字がせき書々初に、筆草生ふる浪間より、若布刈るてふ〔合〕春景色、浮て鴎の一イ二ウ三イ四ウ〔合〕
『いつか東へ筑波根の〔合〕彼面此面を都鳥
『いざ言問はん〔合〕恵方さへ〔合〕
『よろづ吉原山谷堀〔合〕宝船漕ぐ〔合〕初買に、よい初夢をみつ蒲団〔合〕弁天さんと添臥の
『花の錦の飾り夜具〔合〕廿ばかりも〔合〕積重ね、蓬莱山と祝ふなる、不二を背中に家堅の〔合〕塩尻長く居据れば、ほんに田舎も真柴焚く〔合〕橋場今戸の朝煙、つゞく竃も賑ふて
『大々神楽門礼者、梅が笠木も〔合〕三囲の〔合〕土手に囀る鳥追は〔合〕三筋霞の連弾や〔合〕
〔三下り〕『君に逢ふ夜はなア、誰白髭の森越えて〔合〕待乳の山と庵崎の〔合〕その鐘が淵かねことも〔合〕楽しい中じやないかいな、面白や
『千秋楽には民を撫で〔合〕万歳楽には命を延ぶ、首尾の松が枝竹町の、渡船守る身も時を得て、目出度くこゝに隅田川、尽せぬ流れ清元と、栄え寿く梅が風、幾代の春や匂ふらん/\。
国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」
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