題名

石橋(しゃっきょう)

別題

外記節石橋,外記石橋,大石橋(げきぶししゃっきょう,げきしゃっきょう,だいしゃっきょう)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第2編 長唄集(明治42年)

(杵屋六左衛門作)

『是は大江の定元出家し、弱照法師にて候、我入唐渡天の望み候て、只今思ひ立ち、是は早石橋にて候、向ひは文殊の浄土、清凌山にて候程に、此の辺に休らひ、橋を渡らばやと思ひ候
『松風に花を薪に吹そひて、雪をも運ぶ山路かな
『樵歌牧笛の声、人間万事さま/゛\に、世をわたり行く業ながら、あまりに山を遠く来て、雲又跡を立へだて、入つる方も白浪の、谷の川音雨とのみ、聞こえて松の風もなし、実に誤つて半日の客たりしも、今身の上に知られつゝ、妻木背負ふて斧かたげ、岩根はげしき岨伝ひ、小笹を分て歩み来る
『いかに夫なる山人是は石橋にて候歟
『さん候是は石橋にて候よ、向ひは文殊の浄土にて、清涼山とぞ申なり、よく/\御拝み候へ
『我が身の上を佛慮にまかせ、橋を渡らばやと思ひ候
『暫らく候其かみより、名を得給ひし高僧貴僧と聞へし人も、爰にて月日を送り給ひ難行苦行捨身の行にてこそ橋をも渡り候ひしが、獅子は小虫を喰はんとて、まづ勢をなすとこそ聞け、我が放力のあればとて、容易く思ひ渡らんこと、アラ危しの御事や
『謂れを聞けばありがたや、猶々この橋の謂れ、精しく御物語候へや
『語つて聞かせ申べし
『夫れ天地開闢の以来
『雨露を下して国土をわたる、是即ち天の浮橋とも云へり、其の外国土世界に於て、橋の名所様々にして、水波の難を逃れては万民富めり、世を渡るも即ち橋の徳とかや、然るに此の石端は巖峨々たる岩石に、おのれと掛る橋なれば、石橋とこそ名付たれ、実に此の橋の有様は、其の面わづかにして、尺よりは狭ふ渡せる長さ三丈余り、苔は滑りて足もたまらず、谷のそくばく深きこと数千丈とも覚えたり、遥かに峰を見上ぐれば、雲より落つる荒瀧に霧朦朧と闇うして、下な奈利も白波の、音は嵐に響きあひて、虚空を渡る如くなり、橋の景色を見渡せば、雲に聳ゆる粧ひは、譬へば夕陽の雨ののち、虹を放せる其の形、又弓を引ける如くにて、神変仏力にあらずしては、進んで人や渡るべき、向ひは文殊の浄土にて常に清香の花降りて、簫笛琴箜篌夕日の雲に聞ゆべき、目前の奇特あらたなり
『暫く待たせ給へや、影向の時節も今幾程によも過ぎじ
『獅子図乱旋の舞楽のみきん/\、牡丹の英匂ひみち/\、大金りきんの獅子頭、うてやはやせや牡丹ほう/\、こうきんの瑞あらはれて花に戯れ枝に臥し転び、実に上なき獅子王の勢ひ、靡かぬ草木もなき時なれや、万歳千秋と舞納め/\、獅子の座にこそなほりけれ

タグ

#外記節 #石橋物 #獅子

分類番号

00-2310000-s2y1t3k2-0001

音源(宣伝枠)


データ入力日:2016/05/11

長唄 石橋 歌詞