題名

神田祭(かんだまつり)

本名題

〆能色相図,締能色相図(しめろやれいろのかけごえ)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

(資料の題名『〆能色相図』)

(三升屋二三治述)

『秦の始皇の阿房宮、その全盛にあらねども、粹な心の三浦屋の〔合〕ちやは上総屋両助と、気転も菊の籬さへ、山谷風流あらましを、松の位の品定め
『君が由縁と思へばよしや、扇を顔にはな平太、ちよつと格子へ呼子鳥、人目思はで通路の、思ひ競べん恋の山〔合〕不二と筑波をなか/\に、よう似た/\心も姿も、勝り劣らぬ花紅葉、中に柳のどちらへ靡く、風次第とは浮気らし、丸にいの字を命とかけて、重ね扇に三升とは、模様も同じ益荒夫の、色の手管もやさしけれ
『ほんに私も籠の鳥、苦界のうちは初会から、嘘も口舌もいふたとて、それ見やしやんせ世の中は、籬に菊の乱れ咲、嬉しがらせて憎らしい、千に一つも誠なら、勿体ないではないかいな、見返り柳合の手に
〔二上り〕『月をたよりに夜の雁、ふたつみつよつ並んで通ふ〔合〕道を照して忍ぶとは、あんまり粹な山の端に〔合〕せできて濡るゝか〔合〕しよんがいなしどもなや
『うねめのきぬに有ねども、二人はやらじと慕ひゆく〔合〕
『ひとゝせを、今日ぞ祭に当り年、警護手古舞華やかに、飾る桟敷の毛氈*1も、色に出にけり酒機嫌、神田囃子もきほひよく〔合〕
『来て見よかし〔合〕花の江戸〔合〕祭に対の華麗模様、牡丹〔合〕鐶菊裏菊の、由縁も丁度〔合〕花尽し〔合〕
『祭のなア、華麗な若衆が、勇みに勇み、身姿を揃へて、やれ囃せそれ囃せ、花華車手古舞警護に行列、よんやさ、男達ぢやのやれこれさ、達引ぢやのと、言ふて私に〔合〕困らせる
『色の欲ならこつちでも
『常から主の仇な気を〔合〕知つて居ながら女房に、成つて見たいの欲が出て〔合〕神や仏を頼まずに、義理も糸瓜の革羽織、親分さんの御世話にて〔合〕わたりも付けてこれからは、世間かまはず人さんの、前憚らず女夫ぞと〔合〕楽しむうちに又外へ、それから闇と口癖に
『森の子鴉われはまた、尾羽をからすの羽根さへも、なぞと彼奴か得手物の、茲が木遣の家の株
『ヤアやんれ曳け/\よい声かけて、ゑんやらさ、やつと漕ぎ出す屋根船見れば、憎や簾が〔合〕顔かくす、何でもこつちを向しやんせ、よい/\よんやな、よい中同士のこいさかひなら、痴話と口舌は何でもかんでもこんやもせい〔合〕東雲の明の鐘、ごんと鳴るので中直りすんましたよい/\よんやな〔合〕そふよが締めかけ中綱
『ゑんや/\これはあれはさのへ、ゑんやらよう
『実にも上なき獅子王の、万歳千秋限りなく、牡丹は家のものにして、御江戸の恵ぞありがたき/\

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

(目次・本文の題名『締能色相図(神田祭)』)

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

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分類番号

00-1331211-k1n0d1m1-0001

音源(宣伝枠)

 
データ入力日:2016/05/17

清元 神田祭 歌詞


*1 底本「氈」は「毛+亶」と偏と旁が逆になっている。