題名

納豆売(なっとううり)

変化物としての題

月雪花蒔絵の巵(つきゆきはなまきえのさかづき)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

(資料の題名『月雪花蒔絵の巵』)

(桜田左交述)

『風に随つて、しいて柳花の舞を学ぶと、異国の〔合〕人の詩も〔合〕木毎に花ぞと詠じける、我が敷島の言の葉も〔合〕いづれ眺めは変りなき、面白妙にいざさらば
『雪見に船と朝まだき〔合〕浮れ鴉に〔合〕起されて〔合〕眠い所を奇妙とは、世事と勤に湯帰りの〔合〕足駄も怪我に転ばすや、むきな芸者で立て通す
『世すぎ身過を合せて見れば〔合〕七ツ起してナト納豆〔合〕たゝき納豆と〔合〕他処はまだ、夢の内から〔合〕売場先〔合〕コリヤモシとんだお早いね〔合〕扨は朝湯でお磨きの、うまく何処ぞへおくはせに
『イエなんのまあ、そんな厭身は断りや
『エヽいかさま小町の因縁が、わかつておしや穴かしこ〔合〕
『遠慮も納豆に葱陳皮、芥はよしか吉原へ、まぐれて今朝の市戻り
『延喜でいつも買物の、道から無理に引張られ、今日もゑてめが居なんしと、とめる其の手をよい気さと、連を残して後朝に〔合〕
『雨が降るとて居続の
『所を雪に帰るとは、しまりの小口と我ながら〔合〕思案あり顔鼻の先、氷らせてこそ歩み来て
『コリヤアいつもの納豆屋さんか、何といゝ物が降つたぢやアないか
『何のよい物どころか、私等には冷たいものさ
『モシお前は市帰りの持起し酒、よい機嫌で今お帰りかへ
『サアとんだ奴に引掛かつて、夕べの酒の腹塩梅
『モシ其の腹直しには商売物の納豆汁
『コレサお前が一緒に行くなら用心して、内ぢやアてつきりこれ/\が
『何置きやアがれ
『イエ置きやすまいもし
『斯うあらうとは始めから〔合〕思ふて居ても真実と、言はれて鈍き女気に
『ほんに腕へ〔合〕入黒子、互に名をば堀の内、御願かけたり〔合〕人に人
『やつと一所になつてまだ、間もないに市へ行き〔合〕
『泊りがけぢやの何ぢやのと、内ぢやよもやと夜ひと夜を、今か/\と〔合〕明の鐘、
『そこれをやはらでコレ野暮め
〔二上り〕『登り夜船の櫂や艪ぢやとて、梶をとつたへ〔合〕佐田や牧方淀、水に車がくる/\と、伏見へ着くへ
『オヽイ/\親爺殿、其の金此方へ貸して呉れ、与一兵衛仰天し、イエ/\金では御座りません
『娘化粧すりや狐が覗く
『賽の河原の地蔵尊
『一つとや一ト夜あくれば賑かで/\、飾りたてたる
『松一ト木かはらぬ
『色の世界に色なきものは
『わしとかゝさんと糸取て居たにとのことよの〔合〕
『東上総のいちみの郡〔合〕村の古名をば金、沖に見ゆるは肥後様のへ、ソレ/\船よ紋は九ツ九曜の星
『蝶々とまれや菜の葉がいやならよしの先へ〔合〕とまらんせ
『ざれが嵩じて高声の
『オツト口舌に取なして
『もしや夫かとこちや出て見れば、味なぞめきの格子先
『奇妙頂礼騒げ/\、六人一座で〔合〕おしめ初買根よくどなたも〔合〕逢見ての後いちしゆ礼拝
『チトあちらへと比翼の枕、紋日物日の約束かけて〔合〕
『とても洒落るなら大きなこと言やれ〔合〕名ある芸者たちよ皆総揚に〔合〕
『五町残らず皆見世ひかせ、大門打せ、〔合〕
『遣手末社に惣花ざく/\〔合〕黄金の雪が降つて来たさうだ、コレ箕をもつてすくへ/\、こいつはたまらぬ奇妙頂礼大きな事まき出した〔合〕すてきな大尽ぢや
『恋にや誰しも〔合〕上の空、酒で乗出す総長屋〔合〕
『船でヤレコレコリヤ神いさめ〔合〕
『エヽ頼むにへ龍神さん〔合〕扨またうつゝい〔合〕乙姫さん、水の底まで手は届かねど、書いてやるぞへ投げ文を〔合〕よへ〔合〕紙は何紙油紙、小石を包んでどんぶりこ、そりや/\〔合〕つむりは当ります
『儘よ〔合〕浮名が龍の宮へ〔合〕面白や
『話に雪もとけしなき、道をたどりつ打つれて、姿も花の一ト節に、語り伝へて残しける

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

(目次・本文の題名『月雪花蒔絵の巵(納豆売)』)

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

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データ入力日:2016/05/17

清元 納豆売 歌詞