芝八景(しばはっけい)
(六朶園二葉述)
『時津風枝を鳴さぬ君が代は、常磐堅磐に治まりて、栄え賑はふ大江戸の、名に竹芝の八景と、節嬉しくも色変ぬ
『契りは堅き愛宕山、その愛らしき頃よりも、年を数へて馴初し、月の桂のまゆわたり思ひあふ瀬は御浜沖
『恋しき時はいとせめて、文の便りを松風の、琴柱にならぶ雁金も、誰におつると仇口に
『夕潮満て潮留の、船に音聞く夜の雨
『もるゝ浮名は高輪に、夕栄照す紅葉葉の、燃る思ひや恋の闇
『疑念晴す晴嵐は、赤き心よ赤羽に、いつか五日の神かけて胸にいかりはないわいな
『御鬮の札の辻占も、嬉しい縁縁山
〔三下り〕『入相ならぬかね言に、誓ひを三田の雪景色、積る怨みも打解て、粋な/\気性の帰帆とは、岸にもとづく水馴棹、立つる橾の末長く
『わりなき中の楽しさは、芝浦かけて三津の朝、波間に群るゝ蘆田鶴の老せぬ齢幾千代も、変らぬ松の常磐なる、斉こそ栄え久しけれ
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データ入力日:2016/05/17