題名

菊慈童(きくじどう)

本名題

乱菊枕慈童(らんぎくまくらじどう)

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第2編 長唄集(明治42年)

(資料の題名『乱菊枕慈童』)

『峰の初花谷の月、七百年も昨日今日、名をも彭祖と呼子鳥、覚束なくも唯一人、都の空を恋衣、夜半の嵐に梳り、旦の雨に髪洗ふ、木の葉衣の綾錦、われから染むる秋の色、菊の一夜の夢に咲く、思ひ出づるも恥かしや、実に古は宮中にて、錦の褥玉の床、君が情の言の葉に、露の契を重ね菊、いとし可愛も妹と背の、恋にも遥か十寸鏡、おろの妻恋ふ山鳥の、仇な仮寐もつれなきを、末白菊の玉かづら、人目の関は越えもせで、枕の科や乱れ髪〔合〕
『今は深山に世を捨て菊の、雁のはつかの便も絶えて、菊の葉末に書く文字の、筆の命毛切れ果てもせず、汲むや流の菊の酒、あいもおさへもひともと菊の〔合〕
『禿菊とはませ垣の、ませたなりふり川竹の
『縁に引るゝ名も可愛らし
『恋の命は初時鳥
『月の影さへ空懐しき
『二度のあふ瀬は時雨の紅葉
『見れば其のまゝ顔に火が
『高いも
『低いも色の道
『後は互に言ふことさへも、袖にわかるゝ留木の薫
『君と我とは飛び交ふ蝶の、二つ連れたる比翼の車、ちらりちらり/\ちらり
『袖や袂に
『春ならで、胡蝶の夢か幻か
『風に翼の白粉も、乱れ/\て糸の縺れや思の絆
『花にあこがれ月に浮れて、待つに来ぬ夜は氷の地獄に、せめられ身をきる剣はあだに、明ゆく八声の鳥鐘、火中の炎に苦しみて
『くるりくる/\日影の小車、われのみ物や思ひ顔〔合〕
『思へば昔し懐かしや、初春霞秋の風、四季物狂ひと人や問ふ、人の眺めも〔合〕
『袖にそよ/\吹く風を、恋風と思はんせ、オヽそれ/\それ誠/\〔合〕
『心も曇る胸の闇、かんならずエヽ月の夜に、御座んせつまがへさん、つまがへさん/\恋風と思はんせ、オヽそれ/\/\誠々〔合〕
『かさで逢ふ夜はナア、月の雲も面憎いとし、しんきな顔見たや、いとししんきのなん〔合〕
『/\情のそれが誠に、てんと誓文わが思〔合〕
『それが浮名のナ立つとても、こちや嬉し〔合〕
『いとししんきの顔見たや、いとししんきのなん/\情の、露や時雨やてんと誓文我が匂ひ、それが浮名の立つともこちや嬉し、散らぬ姿の乙女菊
『もとより薬の酒なれば、酔にも犯されず、その身も変らぬ七百余才を保ちぬるも、この御枕の故なれば、いかにも久しき菊の水、汲めや汲め/\尽せじと、菊かき分て山路の仙家にそのまゝ慈童は帰りけり

『徳川文芸類聚』第10 俗曲下 『歌撰集』

(目次の題名『菊じどう』本文の題名『幾久慈童(本外題 乱菊枕慈童)』)

『徳川文芸類聚』第10 俗曲下 『歌撰集』

分類番号

00-2310000-k2k3z2d5-0001

音源(宣伝枠)


データ入力日:2016/05/16

長唄 菊慈童 歌詞