#author("2016-09-21T15:19:47+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
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*題名 [#wd99004b]
靭猿(うつぼざる)
*詞章 [#x9f0b86c]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第2編 長唄集(明治42年) [#l0a8618f]
(抱節述)

『夫れ弓矢の始りは、神代の時より用ひしとかや、きゝつらん〔合〕
『矢入れを鞄と名づけしは、其の中空にして、外に毛皮をかけたるは、粟の穂なぞに似たればとて、空穂とは言ひ伝ふ
『あら不思議やな、怪石裂けて石卵生じ、忽ち化して猿となる事は、人を教のたとへ草
『秋ふく風に笛の音は〔合〕
『草刈る童子もいづくかと、たよりし先はそれならで、妻をこひしと鹿笛に、へだてられたる渓川へ、散りし紅葉も時雨にぬれて、とけて嬉しき〔合〕
『雲の昏もしろや
〔二下り〕『早あら玉の春ぞ来る、ぞめき囃せし〔合〕
『花の中〔合〕
『草の莚にひく三味線の其の糸桜いとひなく〔合〕
『殿も家来も〔合〕
『ほのめく顔の、よい緋ざくらの向島、土堤の錦も〔合〕
『花の空、竹屋/\と呼ぶ舟に、乗合せたる〔合〕
『猿廻し、こなたの岸へと〔合〕
『つきにけり
〔本調子〕『太郎冠者あるか
『ハア御前に候
『あれに背負ふた逸物を、いづくへ伴ふなるか〔合〕
『尋ねて参り候へと
『仰に冠者は心得て、のう/\猿曳とまれとこそ、其の猿いづくへ引き候やと言ひければ
『賎の男はハアと手をつかへ、やつがれは此の辺に住む猿曳にて候が、今日もお旦那廻りを致さうと存じまする、心急げばやつがれは、そろり/\と参らうか
『やれ待たうぞ猿曳、この方はかくれもない大名でおりやる、今日は春野の遊にて、弓矢をかたげ狩に参つたるが、あれに持せたる靭を、ない/\毛皮にしよふと思ふ折柄、よい猿に逢ふた、その猿の皮を申受たしと
『聞て驚く猿曳が、猿の皮をお好みとな、そもやそも生きて居るものゝ、皮が何とてあげらるゝで御座らうぞ、此の猿をもちまして、ひと日/\の命を送ります、是をあげましては翌より何の手業なし、こればかりはお許しと
『詫るに聞かぬ大名の、威を張つめし強弓の、ひと矢にて射てと立かゝる
『あゝもし待つて下さりませ猿の皮が御用ならば御手を下し、射殺されましては皮に疵がつき、爰に猿のひと打と申まして、ひと打に命のうせる所が御座るによつて、殺して進ぜませう
『太郎冠者も心得て、早う/\と進めけり
『またあるまじき殿の御意、畜類なれどもよう聞けよ、小猿の時より飼い育て、今更憂目を見る事は不憫な事ぞ〔合〕
『今うつ程に草葉の蔭にても、恨と思ふて呉れるゝなよ〔合〕
『あれ是非なしと振上ぐる鞭の下、まはる小猿のいぢらしき〔合〕
『あれ/\今のを御覧なされましたか、打殺さるゝ鞭とは知らで、船漕ぐ真似を仕まするぞ
『何殺さると知らいて、芸をするとは不憫な事ぞ、やい太郎冠者、うつなと言へ/\連て帰れと申せへと
『聞て喜ぶ猿曳が、唯有難しと伏拝み〔合〕
『此の上は御礼に、猿にひと舞まはせませうと〔合〕
『声張上げ
〔二上り〕『エヽイ猿が参つてこなたの御知行、まさるめでたき能仕る〔合〕
『猿は山王まさるめでたき目出度さよ〔合〕
『天より宝が降りくだつて、増生すれば綾や千反、錦千反唐織物よ〔合〕
『地には黄金の〔合〕
『花が咲候実に豊なる時なれや〔合〕
『げに豊なる時なれや
『さらば我らは御暇と、元来し道へ帰らんと〔合〕
『花を見すてゝ帰る雁、空も高根の不二筑波、名にあふ隅田の春の夕景色をこゝにとゞめけり、景色をこゝにとゞめけり
*その他の情報 [#m5c8e67f]
*関連項目 [#d9f533e4]
[[靱猿(常磐津) ]]
*タグ [#a603c733]
#猿
*分類番号 [#hff98229]
00-2310000-a3t3b5z1-0001
RIGHT:長唄 靭猿 歌詞