#author("2016-10-21T11:34:15+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase") #contents *題名 [#le69330e] お光狂乱(おみつきょうらん) *本名題 [#qe6fa1e2] 初恋千草の濡事(はつこいちぐさのぬれごと) *詞章 [#a73dcf40] **声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第4編 常磐津集(明治42年) [#zc6fa9da] (資料目次に括弧書きで「お光物狂」とある) (瀬川如皐述) 『篠を束ねて突くやな雨に、濡夕立の空晴て 『ヲヽイ/\長吉さん、一緒に行から待てお呉なよ 『川辺うきたつ涼み船、名代名うての楊弓に、箭取娘の仇者は〔合〕お客の的もそんじよそれ、船を〔合〕舫ひて船公は〔合〕芸者の口を〔合〕約束の 『あきられて散るや木の葉の私の身にも仇な嵐が吹わいな 『畜生め、心意気をやりやアがる、其通りだらう 『ヲヤお気の毒 『あじに搦んで駒止の、石原近く浮れ来る 『矢的屋のお竹さん、両国へ店を出しながら、此河岸通へ廻り道かへ 『夫でも先刻の夕立で夜店も張て居られぬ故、中の郷の姉さんの所へ、用達に行た帰りがけ 『其中の郷が怪しいな/\ 『イエ私よりお前こそ、何と思つて今頃に、此川端を唯一人で 『ハテお前も知つて居る山家屋の、別荘迄旦那を送り、船は小梅の締切へ、頼んで置て両国迄の行がけだ、マア何にしてもいゝ所で逢た 『話して行なと夕潮の、彼方の川辺に声々に 『気違よ/\ 『囃し立られ道柴に、露の涙のかこち草、男故にや狂ふらん〔合〕 『結びてし甲斐も縁の糸萩と、散す野分のうたてやつらや、行方何処と白露の、お光が心乱れ髪、さら/\更にわくかたも、泣てひぐらし夫かうろげは、野暮とやらぢやと笑ふは花の、八重に色付く一重に開く、こちの心は汲もせで、余所にかはした妹脊草、盛りも見せで散るならば、共に連てはくれもせで、エヽ憎い程尚川の面、水に中よき浮寐鳥、二人は夫と立寄て 『ソリヤ此子が野咲のお光さんかへ 『そうよ久松殿の許嫁 『何ぢや久松さんぢやと胸づくし 『アヽコレサどうする/\ 『ヱヽ聞へぬわいナア久松さん 『はでな噂を聞てさへ、癪といふものつい覚へ、在所生れの私でも、許嫁すりや女房ぢやもの、悋気の仕様は知ながら、言で月日をくよ/\と、松に時雨のお染さん、連て倶々駆落と、聞て身も世もあら憎や、我夫かへせうき人を、其処か爰かと追風に、姿しどなく伏転ぶ 『これは飛だ掛り合だはへ 『可愛想にどうぞして、気の静まるお守は御座んせぬかへ 『さうよナア、守といつては何もない、水天宮様と此間先達から大山の守太刀、是で悪魔をさつぱりと 『払ひ清め奉る、お御嶽石尊大権現、抱て念願上首尾と、君が袖褄彦山讃岐にどうぞ逢夜を松山も、先ぢや白峰白耆に御苦労、大山葛城夜山にしつぽり中宿へ、山上大峰釈迦が嶽 『こけの行者の御祈念に、慎み給ふと加持しける 『お光はすつくと 『アレ/\/\それ/\/\ 『恋しき人を都鳥、ありやなしや現なく、とめるを払ひ振切て、あてどと波の川岸を、狂ひ慕ふて走り行く 『コレ/\姉さん待ねへよ/\ 『夫ぢやといふてアノ様に気が違ふて居る物を 『夫だからあぶねへわナ、ヲイ姉さん/\ 『のび上る引寄て 『お前も余程浮気者だね、女子さへ見りや誰彼の、ほんに嫌ひも夏木立、アノ柳湯へ行度に、気休め口を真に受て、夫と思ふて染浴衣、まゝ鳴海の比翼紋、末は互ひにどうして斯してと、辛気しかくも女気の、明て言れぬ胸の内 『察して呉たがよいわいな 『へゝなぞと体よく其方から、船の舳と突出すて、乗かへ船か送り船 『ヲヤよしてもお呉れと果しなき 『河辺に漕寄る筏より息吹返す善六が 『アヽ苦しい/\うぬはお染久松逃さぬぞと、藪から棒 『ヤわりやア悪玉の善六だナ 『そういふおのれは若竹の長吉か 『いゝ所へうしやアがつたな 『二人の奴等は何処へ迯した、お染ヤイ 『什麼な事は知ぬわいな 『と言間に落たる手紙を見つけ 『ヲヤ面白さうな此文は 『ヲツト大切の其の手紙 『サア取て見やれ 『サア取て見やれ/\と差出せば 『どつこいさの文 『取んとすれど腰が立ぬ 『蛙のやうにひよい/\とお飛 『ひよい/\と飛ぞ、ひよい/\/\/\ 『蛙一ひよこ三ひよこ/\ 『油屋お染がじよな/\じよ蚰蜒 『番頭さんは這々此奴は妙見柳島 『久しい松の白蛇で参りやせう 『へいこで 『ちよん 『へいこで 『ちよん 『へいこで/\ 『ちよ/\んがちよん、ちよん/\/\ 『追かけ廻る其内に、以前の手紙の封を切り 『シテ其名宛は 『善六様へ、横島弥仲太 『宝の行端を詮議の手掛り、コリヤいゝ物が手に入たはへ 『寮に御座んす旦那の所へ 『持て行れてたまるものか 『気をもむ折柄大川へ、家台囃しの大茶船、囃子につれて善六を、小梅の寮へぞ 『よいやサ 『ヲイタヽ連て行く *その他の情報 [#z9299c7b] 文久頃(1861-1863)成立 三世瀬川如皐改作 五世岸沢式佐作曲 *関連項目 [#xeb9e09e] *タグ [#x6c99e5e] #狂乱物 *分類番号 [#i2de78a0] 00-1331200-a5m2t3k2-0001 RIGHT:常磐津 お光狂乱 歌詞