#author("2016-10-21T11:07:29+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
#contents
*題名 [#b7b1f23d]
お染久松(おそめひさまつ)
*本名題 [#w91628d9]
道行浮塒鴎(みちゆきうきねのともどり)
*詞章 [#v2753f78]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#ja970ecb]
(資料の題名『道行浮塒鴎』)

『今も昔もかはら町、名代娘の只一人、遅れ道なる久松も、まだ咲かかる室の梅〔合〕莟の花の振袖も、内を忍んでやう/\と〔合〕爰で〔合〕互の約束は、心もほんに隅田川〔合〕人目堤の川岸を、たどり/\て来りける
『ヤアお染さま、やつぱりあなたは山家屋へ、お帰りなされて下さりませ
『わが手枕に梅が香の、まだ床なれぬ鶯も、子飼の内から御恩をうけ、大事の/\お主様、勿体ながら家来の身
『お染はじつと顔を見て
『あれ又あんな無理言ふて、そんな其の様な言訳を
『それよりわしが〔合〕厭ならば、一人未来へいつて見や〔合〕男心はさうしたものか〔合〕
『小さい時からなまなかに〔合〕手習ひまでも〔合〕ひとつ所、なにやら草紙へ書いたのを〔合〕そなたに見せて問ふたれば、恋といふ字と言ふたのを〔合〕結び始の殿御ぢやと、思ふて居るのにそのやうな〔合〕
『恨み辛みも何からと、袖にすがりて涙ぐむ、娘心ぞ可愛らし
『朝湖が筆を写し絵に、真似て三升の彩色も、三筋は足らぬ猿曳が
『得意廻りの口祝い、宿の出掛にや嬶衆と差で〔合〕ぐつと熱燗引つかけた〔合〕顔は太夫と〔合〕花紅葉〔合〕
『まさる目出度やまつかいな、あかんべい/\、ごまぢやなつけれど、くるりやくるりのら廻り、くるりと廻つて菜種の蝶よ〔合〕流れ渡りの隅田堤、機嫌上戸の気も軽く、浮れ拍子に来りける
『ヤア見れば男と女の二人連、ハヽア聞へた、扨は此頃噂のある、ウヽハテ何であらうと、マアわしが言ふ事を聞つしやりませ
『爰に東の町の名も、聞いて鬼門の角屋敷、瓦町とや油屋の〔合〕一人娘に〔合〕お染とて、年は二八の細眉に、内の子飼の久松と〔合〕忍び/\の寐油を、親達や夢にも白絞
『二人は蓉の花盛〔合〕しぼりかねたる振の袖、梅香の露の玉の緒の、末は互の吉丁子、そこで浮名の種油、異見まじりに興じける
『春を取越すお猿万歳、目出度う爰でかなでませうか
『猿若に御万歳とは、櫓も栄へてましんます〔合〕青陽新玉の年立返る周の春、愛嬌ありける〔合〕ぼつとりもの
『二八十六で諸人の引ぱる色娘、お染といつたら立たりしよ
『お猿は目出度やな/\
『さりとは/\
『斯様申す才蔵なんぞは太鼓の撥が、むつくり/\/\/\/\むつくりしやんとおつたつて
『ホヽヤレまんざらこや/\、まんざらこじやありませい
『百万年の寿を
『祝に祝ふて猿曳は、里ある方へと走り行く
『ハテ知らぬ人とは言ひながら、親切なるアノ意見、さりながらとても死なねばならぬ二人が身の上、ちつとも早うお染さま
『顔見合せて目は涙
『今は二人も束の間に、弥陀の御国に隅田川〔合〕蓮の台の新世帯、いざ言問はん都鳥、足と橋場の明近き、早長命寺の鐘の音も、爰に浮名や流すらん/\
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#s094de18]
(目次の題名『道行浮塒鴎(おそめ久松)』目次の題名『〔おそめ/久松〕道行浮塒鴎』)

「今も昔はかはら町名代娘の只一人おくれ道なる久松もまだ咲かゝる室の梅〔合〕莟の花のふりそでも内を忍んでよふ/\とこゝで互の約束は心もほんに隅田川人目づゝみの川岸をたどり/\りて来りける
「お染さまやつぱりあなたは山家屋へお帰りなされて下さりませ
「わが手枕に海が香のまだとこなれぬ〔合〕鶯も子がいの内から御恩をうけ大事の/\お主様勿体ながら家来の身
「お染はじつと顔を見てアレまたあんな〔合〕無理〔合〕いふてそんななのよな〔合〕言訳を
「それよりわしがいやならば一人未来へいつて見や男心は
そうしたものか〔合〕
「ちいさい時からなまなかに手習までも一つ所なにやらそうしへ〔合〕書いたのを
「そなたに見せて問ふたれば恋といふ字といふたのを
「結びはじめの殿御じやと思ふてゐるにその様な〔合〕
「うらみつらみも何からとそでにすがりて涙ぐむ娘心ぞかはゆらし
「朝湖が筆をうつしゑに真似て三枡のさいしきも三筋はたらぬ猿引が
〔團十郎出〕〔二上り〕「とくいまはりの口祝ひ〔合〕やどの心がけにやかゝ衆とさしで〔合〕ぐつとあつがん引かけたへ〔合〕貌は太夫と花もみぢ
〔ナヲル〕「まさるめでたやまつかいなあかんべい〔合〕あかんべいごまじやなつけれと〔合〕くるりやくるりのらまはり〔合〕くるりとまはつて〔合〕なたねの蝶よながれわたりのすだづつみ機嫌上戸の気もかろくうかれ拍子に来りける
〔團〕「ヤア見れば男と女の二人迚ハヽア聞へたさては此頃噂のあるハテなんであろふとわしがいふ事を聞つしやりませ
「こゝにあづまの町の名も聞いてきもんのかどやしき〔合〕瓦町とや油屋の一人娘に〔合〕お染とて〔合〕
「年は二八の細眉に内の子飼の久松と〔合〕忍び/\のねあぶらを親たちやゆめにも知らしぼり〔合〕
「二人は莟の花ざかり〔合〕しぼりかねたる振の袖梅香のつゆの〔合〕たまのをの〔合〕末は互の吉てうじ〔合〕そこで浮名のたねあぶら〔合〕意見まじりにきやう
じける
〔團〕「春をとりこすお猿萬歳めでとふこゝでかなでましやうか
「猿若に御萬歳とは櫓もさかへてましんます〔合〕青陽新玉の年立ちかへる周の春愛敬ありけるぼつとりもの〔合〕
「二八十六で諸人の引ぱる〔合〕色娘〔合〕お染といつたら立たりしよ
「お猿はめでたやめでたやな
「さりとは/\〔合〕
「かやう申す才蔵なんぞは太鼓の撥がむつくり/\/\/\むつくり/\しやんとおつたて
「ホヽヤレ/\〔合〕まんざらとやまんざらとや〔合〕まんざらこしやありやせまい
「百万年の寿といはひに祝うて猿引は里ある方へと走り行く
〔粂〕「ハテ知らぬ人とはいひながら親切なるアノ意見さりながらとても死なねばならぬ二人が身の上ちつとも早うお染さま
「顔見合せて目は涙
「今は二人もつかの間に〔合〕みだの御国にすみだ川蓮のうてなのあらぜたいいざこと問はん都鳥〔合〕あしと橋場のあけちかきはや長命寺の鐘の昔も爰に浮名や流すらん/\。
*その他の情報 [#m64c9d4a]
文政8年(1825)11月初演 四世鶴屋南北作詞 初世清元斎兵衛
*関連項目 [#x7e129a4]
*タグ [#d4354887]
*分類番号 [#g14c0f2b]
00-1331211-a5s5m4h2-0001
RIGHT:清元 お染久松 歌詞