#author("2016-10-21T11:36:02+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase") #contents *題名 [#uc8c396c] 三人生酔(さんにんなまよい) *本名題 [#od93a465] 節句遊恋の手習(せっくあそびこいのてならい) *別題 [#mce2522c] 夕涼み三人生酔(ゆうすずみさんにんなまよい) *詞章 [#j9709123] **声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第4編 常磐津集(明治42年) [#dbd1fbb0] (資料の題名『節句遊恋の手習』) 『四季の詠めもおのづから、五つの節を代々にひく、小松のはやし竹の笛、波の鼓も春秋の、調に通ふ4つの海 『静けき空のほの/゛\と、通神楽に明初て、豊年祝ふ鳥追の、声も軒端に豊なる 『海上遥に見渡せば、七福神の宝船、長閑に風も富貴自在、徳若に御万歳とは御代も栄へてましんます、君が千歳をうちはへて、貢七野の七草に、拍子も揃ふ梅若菜、鞠つく羽根つく福引や、きみに床しき春遊び 『頃も弥生の雛祭、梢に花をうちかけし、藤の姿に桜のかさね、松の橾をたてる雛、妹脊を結ぶ檜扇に 『ならす合図の爪琴は、音も細殿に音信るゝ、しげき廊下の御簾の隙 『九重香へ桜時、団扇はなびく恋風も 『桃や柳のいたづらに 『いろ香 『互ひに争ふて 『鶏に恨みの数々も、わかれて逢ふて合せ鶏、ヤツト声かけおのが羽に、発矢と受て妻鳥を、蹴爪にかけて鶏冠のうへ、身ぶるひ鳥なき尾かたげも、これぞ互ひの攻め鼓、鳴音羽音の勇ましく、踏歌の節会ぞいさましく 『夜風山風不二颪、筑波北風に両国のサア 『ヲイ船公川岸を突て下つし 『素敵に船が出たぢやアねへか 『名にし涼の夕景色、三人乗の騒ぎ船 『アヽ暑いこつちや/\、イヤ又大川の涼しい事はへ、ヲヽ涼しい/\、イヤ同じ騒ぎでも、其方は野郎の三すくみ、彼方は三味線美婦入ぢや、へゝ畜生奴 『色がある、知りつゝ惚た横恋慕言出すからは何処までも、立て貰はにやならぬぞへ 『エヽ大分心意気をやつゝけるぜ 『アレヲ肴に此大盞で、ぐつと一杯呑廻しとやりませうか 『ヤ其奴はよからう 『コウそんなら一つ注で下つし、と無茶苦茶酒の筒茶碗、ヱイアヽいゝ気味だ、浴るばかりの瀧呑に 『ういた機嫌の癖 『と 『癖 『三人生酔これならん 『ヱイ何だかむか/\癪に障つて来たぜ 『ハヽヽヽハヽヽヽ何だ癪に障つた、ハヽヽヽ癪に障つたが可笑い/\ハヽヽヽハヽヽヽ 『コレサ/\其様に訳もない事に腹を立たり、可笑しくもない事に笑たり、そして貴公達の顔がノヤ、六チにも七チにも見へて、其処等あたりがぐるり/\と、マヽヽヽ廻るやうでノヤ、どうしらよからうと思へば、何だか悲しくなつて/\、エヽヽヽ思はず涙がこぼれあめ、袂をしぼる計りなり 『エヽ箆棒奴、涼みに出てほへやアがることはねへ、アレ見や向ふの船で美しいあねさんが可愛らしい手で、アレ何かすらア、エモシ/\お押へならばお合を致しやせうぜ 『簾ばつたりおちこちの、人目といふは知ばこそ、しつと身に添へ抱締て 『ヲヤ大分俺をやすくするな 『ハヽヽヽコレサ/\三人斯して極粋なことづくしで、思いれぶつ洒落やうと思つて来たのに、そんなにハヽハ腹を立たりヘヽヽ泣たりするも野暮ぢやアねへが、そつち達は酒の上が悪いと思つたら、水の上まで矢張悪いぜハヽヽヽ、アレ隣りの船で何か始めるぜ、通り者の寐言ぢやアねへが、訝う調子をあはせるぜ、送つて出やる肌薄な、姿を見れば胸迫り 『ヲヽ違へねへ/\その胸迫りが尤もだ/\/\/\ 『コレサまた泣くか、困りもんだぜ 『それだと言て、これが泣ずに居られうか、アヽヽヽヽ 『何故よ 『アレあの新内を聞くにつけ、浮川竹の苦界の身でも、実に惚れゝばアノ通り、わしもちつとやそつとは掛り合つて見た覚へもあれば、今の此の身にエヽひしと当つて熱い涙がエヽ胸先へ、どうも/\悲しうて男泣に此様にと、二人が袂にとり縋りヘヽヽヽ 『ハヽヽヽヽ 『ヱヘヽヽヽ 『ハヽヽ 『ヘヽヽ 『ハヽ 『ヘヽ 『ハヽ 『ヘヽ 『分も涙のすゝり泣 『腹の皮よるムヽヽハヽヽムヽヽハヽヽヽハヽヽヽ大笑ひ 『何だ/\/\先刻からぐつと虫を押さて聞て居りやア、泣と笑ひの掛合だア、ヱヽ見たくでもねへ好加減にしやアがれ 『オヤ又怒つたぜどうも丸くねへ、兎角浮世は色と酒ハヽヽヽ、コレ呑たまへ涼みたまへ酒の燗主はちつと温いが、サア機嫌直して一つおあがり 『何だ機嫌直して/\がおらア気にくはねへ 『ヤ処を是非共 『いやだよ 『コレ/\/\/\呑しやませ、のほよほ/\/\さんな/\またあろかいな 『呑だらモ一つ廻しやアがれ 『オヽそうぢや/\、おさる目出度やナ、泣も 『笑ふも 『腹立も 『酒に興ある船遊、月も及ばぬ雪も及ばぬ、眺めの花火の賑ひは、高尾川一吉野丸、屋台囃に騒ぎ歌、繁華の御代のさまなれや 『初秋や名も文月の恋の謎、銀河まつりの戯れに、サアいつか女夫の約束はヲイ/\/\/\よいやサ、風も夜寒になるまゝに 『冴行く月の光まで、霜かと紛ふ川波や、賤が手業に晒す細布 『見渡せば/\、峰の梢の紅葉葉に、露が時雨て面白や/\ 『立波が/\膳所の網代木さへられて、流るゝ水を堰止よ/\、晒す細布手にくる/\と、手にくる/\といとしほらしき賤が業 『実にや九日の菊の香の、残る嬉しき常磐木の、枝葉茂りて栄へける/\ *その他の情報 [#b1a03612] 天保4年(1833)6月 五世岸沢式佐作曲 *関連項目 [#y8f25bf7] *タグ [#dc4201db] *分類番号 [#r2a7c523] 00-1331200-s1n0n2n0-0001 RIGHT:常磐津 三人生酔 歌詞