#author("2016-10-21T11:11:20+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
#contents
*題名 [#r0f7d392]
喜撰(きせん)
*変化物としての題 [#rfdf2cdc]
六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり,うたあわせすがたのいろどり,ろっかせんすがたのさいしき,ろっかせんすがたのいろざし)
*別題 [#ma336205]
喜撰法師(きせんほうし)
*詞章 [#w9a07131]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#y8f5fcfe]
『我が庵は、芝居の巽常盤町、しかも浮世を離れ里
『世事で丸めて浮気でこねて、小町桜の詠に倦かぬ、彼奴にうつかり眉毛をよまれ
『ほうし/\は啄木鳥の、素見ぞめきで帰らりよか、わしは瓢箪浮く身ぢやけれど
『主は鯰の取り所、ぬらりくらりと今日も亦、浮れ/\て来りける
『もしやと簾を他処ながら、喜撰の花香茶の給仕
『波立つ胸を押撫でゝ、しまりなけれど鉢巻を、幾度しめて水馴棹
『ぬれて見たさに手を取りて、小野の夕立縁の時雨
『化粧の窓の手をくんで、どう見直して胴慄
『今日の御見の初昔、悪性と聞て此の胸が、朧の月や松の蔭
『私やお前の政所、いつか果報も一森と〔合〕ほめられたさの身の願
『惚れすぎる程愚痴な気に、心の底の知れ兼て
『じれつたいでは
『ないかいな
『何故惚れさしたコレ姉へ
『自惚すぎた悪洒落な、わつちもそんなら勢ひ肌、五十五貫でやらうなら、廻りなんしへがら/\鉄棒に、路次やしまりやす
『長屋の姉へが鉄砲絞の半襟か、花見の煙管ぢやあるめへし、素敵に首にからんだは〔合〕
『廊下鳶が油揚さらひ〔合〕お隣の華魁へ、知らねへ顔もすさまじい、何だか高い観音様の
『鳩は五重や三重の、塔の九輪へとまりやす
『粹と言はれて浮いた同士
『ヤレ色の世界に出家を遂げる、ヤレ/\/\、こまかにちよぼくれ
『愚僧が住家は京の巽の、世を宇治山とは人は言ふなり〔合〕
『ちや/\くさゑんの、咄す濃茶の縁の橋姫〔合〕
『夕べの口舌の袖の移り香、花橘の小島が崎より、一散走りに走りて戻れば〔合〕
『内の嬶が悋気の角文字、牛も涎を〔合〕
『流るる川瀬の〔合〕
『内へ戻つて我から焦るゝ、蛍を集めて手管の学問
『唐も日本も廓の恋路が、山吹流しの水に照添ふ朝日のお山に、誰でも彼でも二世の契は平等院とや、去とは是はうるさいこんだにホウ
『奇妙頂礼どら如来
『衆生手だての歌念仏
『釈迦牟尼仏の床急ぎ、抱て涅槃の長枕、睦言がはりのお経文
『なまいだ/\なんまいだ、何故にとゞかぬ我が思ひ、ほんにサ、忍ぶ恋には如来まで来て、見やしやんせ阿弥陀笠、黄金の肌でありがたい
『なまいだ/\なんまいだ、何故に届かぬ我が思ひ、ほんにサ、こゝに極る楽しさよ
『浪花江の片葉の葦の結ぼれかゝり、
『ヨイヤサ
『コレハイナ
『解てほぐれて逢ふことも、まつに甲斐あるヤンレ夏の雨
『ヤアトコセ
『ヨイヤナ
『アリヤ/\
『これはいナ
『このなんでもせへ
『住吉の岸辺の茶屋に腰うちかけて
『ヨイヤナ
『コレハイサ
『松で釣ろやれ蛤を、逢ふて嬉しきヤンレ夏の風
『ヤアトコセ
『ヨイヤナ
『アリヤ/\
『これはいナ
『このなんでもせへ
『姉さんおん所かへ、島田金谷は川の合、旅籠は鐚でお定り
『お泊りならば泊らんせ、お風呂もどん/\わいてある、障子も此の頃はりかへて、畳も此の頃替へてある、お寝間のお伽をまけにして
『草鞋の紐のあだ解の、結んだ縁の一夜妻
『あんまり憎うもあるまいか
『テモさうだろ/\さうであろ
『住吉様の岸の姫松目出度さよ、いさめの御祈祷、清めのご祈祷、天下泰平国土安穏目出度さよ
『来世は生を黒牡丹、おのが庵へ帰り行、我が里さして急ぎ行く
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#vd418ef3]
(目次の題名『〔六歌仙のうち〕喜撰ほうし』本文の題名『〔六歌仙の内〕喜撰法師』)

(作者 松本幸二)

「我庵は芝居のたつみときは町しかも浮世をはなれざと
〔芝翫出〕「世辞で丸めてうは気でこねて〔合〕小町桜のながめにあかぬ〔合〕きやつにうつかり眉毛をよまれ
〔長唄〕「法師々々はきつゝきの〔合〕すけんぞめきでかへらりよか〔合〕わしは瓢箪〔合〕うく身じやけれど〔合〕
「ぬしはなまづのとり所〔合〕ぬらりくらりと今日もまたうかれうかれて来りける
〔長唄〕「もしやとみすをよそながらきせんの花か茶の給仕
「なみたつむねをおしなでゝ〔合〕しまりなけれど鉢巻も幾度しめてみなれざほ〔合〕
〔長唄〕「ぬれて見たさと手をとつて小野の夕立〔合〕ゑにしのしぐれ
「化粧の窓の手をくんでどふ見直してどうぶるい
〔長唄〕「けふのごげんの初むかし悪性ときいて此胸がおぼろの月や松のかげ
「わたしやお前の政所いつか果報も一もりと〔合〕ほめられたさの身のねがひ
〔長唄〕「ほれすぎる程ぐちな気に
「心の底の知れかねて
〔長唄〕「じれつたいでは〔合〕ないかいな
「なぜほれさせたコレあねへ
〔長唄〕「うぬぼれすぎたわるじやれなわつちもそんならきおいはだ五十五貫でやろふならまはりなんしへがら/\鉄棒にろじやしまりやす
「ながやのあねへが鉄砲絞の半襟か花見の煙管にやあるめへしすてきに首にからんだは〔合〕廊下とんびが油揚さらい〔合〕おとなりのおいらんへしらねへ顔もすさまじいなんだか高い観音様の
〔長唄〕「鳩は五重や三重のとうの九輪へとまりやす
「すいといはれて浮いたどし
〔長唄〕「ヤレ色の世界に出家をとげる〔合〕ヤレ/\/\こまかにちよぼくれ〔合〕
「愚僧が住家は京の辰巳の世を宇治山とや人はいふなり〔合〕
「ちや/\くちやさゑんのはなすこいちやのゑんのはし姫〔合〕
「ゆふべの口説の袖のうつりが花橘の小島がさきより一散りに走つて戻れば〔合〕
「内のかゝアが悋気のつのもじ牛もよだれを
「ながるゝ川瀬の〔合〕
「内へ戻つて我からこがるゝ蛍をあつめて手管のがくもん
〔長唄〕「からもやまとも里の恋路が山ぶき流しの水にてりそふ朝日のお山に誰でも彼れでも二世の契りは平等院とやさりとはこれはうるさいこんだにホウ
「帰命頂礼〔合〕どら如来
〔長唄〕「衆生てくだのうたねぶつ
「釈迦牟尼仏の床いそぎ抱いてねはんの長枕むつごとがはりのお経文
「なまいだなまいだなんまいだなぜにとゞかぬ我思ひほんにサ
「忍ぶ恋には如来まできて見やしやんせ阿弥陀笠こがねのはだへでありがたい
「なまいだ/\なんまいだなぜにといかぬ我思ひほんにサ
「こゝに極まる楽しさよ
「なには江の片はのあしの結ぼれかゝり
「ヨイヤサコレハイナ
「とけてほぐれてあふ事も松にかひありヤレなつのあめ
「ヤアトコセ
「ヨイヤサ
「アリヤ/\
「これはいナ
「コノなんでもせへ〔合〕
「住吉のきしべの茶屋に腰打かけて
「ヨイヤサ
「コレハイナ
「松でつろやれまはぐりをあふてうれしき〔合〕ヤレ夏の風
「ヤアトこセ
「ヨイヤナ
「アリヤ/\
「これはいナ
「コノなんでもせへ
「あねさんおんじよかへ〔合〕島田金谷は川のあひはたごはびたでおさだまり
〔長唄〕「おとまりならばとまらんせおふろもどん/\わいて居る障子も此頃張換へて〔合〕畳も此頃かへてあるお寝間のお伽もまけにして〔合〕
「草鞋の紐にあだどけの結んだ縁の一夜づま
〔長唄〕「あんまりにくふもあるまいか
「テモそふだろそふだろそふであろ〔合〕
「住吉さまの岸の姫松目出度さよいさめの御祈祷きよめの御祈祷天下大変国土安穏めでたさよ
「来世はしやうをこくぼたん己が庵へ帰り行く我里さしてぞ急ぎ行く。
*その他の情報 [#f3ed8ce0]
天保2年(1831)2月初演 松本幸二作詞 初世清元栄次郎作曲
清元長唄掛合で長唄は十世杵屋六左衛門作曲
『桜真砂白波』(くもいのはなまさごのしらなみ)の二番目大切
*関連項目 [#x091d7ee]
[[喜撰(長唄)]]
*タグ [#wcb8d60b]
#掛合(清元 長唄) #変化物 #チョボクレ
*分類番号 [#m791206b]
00-1331211-k2s4n000-0001
RIGHT:清元 喜撰 歌詞