#author("2016-10-21T11:12:08+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
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*題名 [#pad5a7d2]
権上(ごんじょう)
*本名題 [#se9d800b]
其小唄夢廓(上)(そのこうたゆめもよしはら(じょう))
*詞章 [#la0117be]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#af220b34]
(資料の題名『其小唄夢廓』)
(目次には括弧書きで「小紫権八」とある) 

(福森亭宇助述)

〔二上り〕『栄へゆく〔合〕人一トさかり花一時、翌は白井が身の果も、思案の外の罪〔合〕科に〔合〕
『ひかれ廓の通い路、派手な姿に引換えて、今日は哀れにちりかゝる、浅黄桜と夕嵐、ひまゆく駒の道も早、かゝる縄目に大木戸の、色故にこそ命さへ
『逢ひた見たさは飛立つ許り、籠の鳥かや恨めしや〔合〕
『これも由縁の紫と、二人が中を世にうたふ、色品川はかはれども、今日ぞ鮫津の無常音、駒をとゞめて
『斯く数万の御見物へ我身の懺悔、生れ故郷は因幡の国、跡先思はぬ若気の短慮、義に因つて人を害し、はる/゛\下りし此の吾妻路、不図色里へ通ひ初め、しげ/\行ば浪人の貯尽き、盗み取つたる金故に、我と苦しむ此の身の罪、若いお方は取分て、見る程のこと羨しく、つい思ひつく不了見、色と欲とに身を果す、此の身の見せしめ業晒、劫の秤や浄瑠璃の、鏡に写る罪科と、今更思ひ当りました
『われと悔みの教訓も、心の駒の急がれて〔合〕爰ぞ名に古る鈴の森、最期場さして来る折しも
『廓を抜て小紫、裾もほら/\駆け来り
『ヤア権八さん、まだ死ずに居て下さんしたか
『ヤそちや小紫、扨は此の権八に
『サア此の世で一ト目逢ひたさに、廓を駆落して来たわいな
『未練には似たれども、せめて別れの水杯、最期の折は何事も、一つの願は叶ふとある、何卒暫の御許と
『涙と共に願ふにぞ
『情ある警護の役人、如何様暫時の猶予は免して呉れん
『エヽ有難う御座りまする
『嬉し涙に取すがり〔合〕手桶の水を汲替す〔合〕柄杓の縁長かれと〔合〕あの世を頼む〔合〕
『南無妙法蓮華経/\
『妙法蓮華今日の今〔合〕あの世の雲と紫が、縛縄切つて剣の山、すぐに白井が修羅道も、是なん南柯の一夢にて、眠りの夢は覚めにけり
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#x96b1530]
(目次の題名『其小唄夢廓』(権八)本文の題名『〔小紫/権八〕其小唄夢廓』)

〔二上り〕「栄ゆく〔合〕人ひとさかり花一時〔合〕あすは白井が身の果も思案の外の〔ナヲル〕つみとがに〔合〕
「ひかれくるわへかよいぢのはでな姿に引かへてけふはあはれにちりかゝるあさぎざくらと夕あらしひま行く駒の道もはやかゝるなはめに大木戸の色ゆゑにこそ命さへ
「あいた見たさは飛立つばかりかごの鳥かやうらめしや〔合〕
「これもゆかりの紫と〔合〕ふたりが中を世にうとふ色品川はかはれども〔合〕けふぞさめずの無常音こまをとゞめて
〔團十郎〕「かく数万の御見物へ我身のざんげ生れ故郷は因幡の国跡先思はぬ若気の短慮義によつて人を害しはる/゛\下りし此東路ふと色ざとへ通ひそめしげ/\。行けば浪人の貯へつきぬすみとりたる金ゆゑに我とくるしむ此身のつみ若いお方はとりわけて見る程の事うらやましつい思ひ付き小了簡色と慾とに身を果す此身の見せしめごふさらしごふのはかりや浄玻璃の鏡にうつるつみとがと今さら思ひエヽあたりました
〔ハシル〕「われとくやみの教訓も心のこまのいそがれて〔合〕こゝぞ名にふる鈴の森最期場さして来る折しも
「廓を抜けて小紫すそもほらほらかけ来り
〔菊五郎〕「ヤア権八さんまだ死なすに居て下さんしたか
〔團十郎〕「ヤそちや小紫さては此権八に
〔菊〕「サア此世で一日逢ひたさにくるわをかけおちして来たわいな
〔團〕未練には似たれどもせめてわかれの水盃
〔菊〕「最期の折は何事も一つの願ひは叶ふ事どふぞしばしのおゆるしと
「涙と共に願ふにぞ
「情あるけいごの役人いかさま暫時の猶予はゆるして呉れん
〔菊〕「ヱヽ有難うござりまする
「うれし涙にとりすがり〔合〕手桶の水をくみかはす〔合〕ひさくのゑにしながかれと〔合〕あの世をたのむ
〔カン〕「南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経〔合〕
〔カン〕「妙法蓮華今日の今〔合〕
「あの世の雲と紫がいましめ切れて剣の山すぐに白井が修羅道もこれなん南柯の一夢にて眠りの夢はさめにけり/\。
*その他の情報 [#c340ef37]
文化13年(1816)1月
*関連項目 [#h265a3b6]
[[権下(清元)]]
*タグ [#r6f14569]
*分類番号 [#r6a86452]
00-1331211-g5n0z2y5-0001
RIGHT:清元 権上 歌詞