#author("2016-10-21T11:03:44+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
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*題名 [#ea301845]
糸の五月雨(いとのさみだれ)
*詞章 [#w8a1ccbe]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#e9cb1929]
(資料目次に括弧書きで「小菊半兵衛」とある) 

(福森亭宇助述)

『夢むすぶ、うたゝ枕に時鳥〔合〕翼も梅雨につい濡れて、濡れて恥かし忍ばじと〔合〕こゝろ小菊と半兵衛は、取乱したる姿振も〔合〕しめて結ぶの縁ならで、解けぬ思と三重の帯
『これ小菊さん、思ひがけない屏風の内、契をこめた其の上に、斯う言へば何うやら、逃るやうにも思はうが、色恋を見やぶつて、楽しむ酒の介抱を、小富と思ひ出来心、枕交して今更は、納まらぬ今宵の仕儀
『それいなア私も浮気をとり置いて、此身に深い願がある故、それを頼まん為ばかり、心に染まぬ殿様へ、得心したに振替つて
『互に思はぬ間違づく、今宵の事は何事も
『サア水にしたう思ふても、枕交して胴欲な、申し半兵衛さん
『流の廓に〔合〕身は住めど〔合〕色気離れて訳知と〔合〕褒められた身を胴欲な〔合〕寐て真実は知りながら、何う是限に〔合〕なろぞいな〔合〕
『自体私は深川へ、芸子になりし始めから〔合〕店のお方の出番にも、呼ばれて一度二軒茶屋〔合〕しかも其の時此の家で〔合〕主に始めて合の手も〔合〕
『一座の中で水際の、たつた一人が目に立つて〔合〕どうか調子の好さ相な、如才は内所の取捌き、いとしらしいとかせかけて〔合〕
『色に高音の三味線も〔合〕
『吹けよ川風あがれよ簾、中の小唄のひと口に〔合〕
『おもひつくだもうつかりと〔合〕主に見とれてなぶられて、じらされた身の嬉しさも〔合〕及ばぬ恋に揚羽の蝶〔合〕染めて染まらぬ比翼ぞと〔合〕
『浮世に強ねて暮せしに〔合〕どんな浮気な神さんが〔合〕今宵結びし縁の糸、解けじ〔合〕離れじ〔合〕青柳の、風にもつるゝ風情なり
『落散る状を半兵衛は、さつと開いて読下し
『ヤヽヽヽヽ此の状の表を見れば、扨はそなたは敵打か
『サア御主人磯貝実右衛門様の、敵は島川太兵衛とやら、紛失の武術の秘書の詮議、助太刀倶に頼むとある
『そなたの兄の依頼の状、町人なれども武士気質、一大事を知つたからは、引はせぬ及ばずながら
『力となつて下さんすか
『如何にも更めて夫婦の盃
『エヽ嬉しう御座んす
『縁ある中はくどからず、つい気も解けて盃の、互の心汲みかはす、二世の〔合〕契ぞ羨し
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#cd816ef8]
(目次の題名『糸の五月雨(小ぎく半兵衛)』本文の題名『〔小ぎく/半兵衛〕糸の五月雨』)

(作者 福森喜宇助)

「夢結ぶうたゝ枕にほとゝぎす〔合〕つばさもつゆについぬれてぬれてはづかししのばしとこゝろ小ぎぐと半兵衛は取乱したるなりふりも〔合〕しめてむすぶの縁ならでとけぬ思ひと三重の帯
〔團十郎〕「コレ小ぎくさん思ひがけない屏風の内ちぎりをこめたそのうへにこふいへばどうやらにげるやうにも思おふがいろ恋を見破つてたのしむ酒の介抱を小富と思ひ出来心枕かはして今さらにおさまらぬ今宵のしぎ
〔松江〕「それいなわたしもうは気を取り置いて此身に深い願ひのある故それを頼まんためばかりこゝろにそまぬ殿様へ得心したにふりかはつて
〔團〕「互に思はぬ間違ひづぐ今宵の事は何事も
〔松〕「サア水にしとう思ふても枕かはしてどふよくなもふし半兵衛さん流れの里に身は住めどいろけ放れてわけ知りとほめられた身をどふよくな〔合〕寝て真実は知りながらどうこれぎりに〔合〕なろぞいな〔合〕
「じたいわたしは深川へ芸子になりし始めから店のお方の出ばんにもよばれて一度二軒茶屋しかも其時此内で主にはじめてあひの手も
「一座のなかで水ぎはのたつて一人が目に立つてどうか調子のよさそふな如才は内証の取さぼきいとしらしいとかせかけて〔合〕
「いろに高ねの三味線も〔合〕ふけよ川風あがれよすだれ中の小唄の一口に
「思ひつくだもうつかりとぬしに見とれてなぷられてじらさた身のうれしさも〔合〕及ばぬ恋にあげはのてふ染てそまらぬ〔合〕ひよくぞと
〔カン〕「浮世にすねて暮せしにどんなうはきな神さんが今宵結びし縁の糸とけじ〔合〕はなれじ〔合〕青柳の風にもつるゝ風情なり
「落ちる状を半兵衛はさつと聞いて読み下し
〔團〕「ヤヽ此状のおもてを見ればさてはそなたはかたき打か
〔松〕「サア御主人磯貝実右衛門様のかたきは島川太兵衛とやら紛失の武術の秘書の詮議助太刀ともに頼むとある
〔團〕「そなたの兄の頼みの状町人なれども武士かたぎ一大事を知つたからは引はせぬ及ばずながら
〔松〕「力となつて下さんすか
〔團〕「いかにもあらためて夫婦の盃
〔松〕「エヽ嬉しうござんすはいな
「縁あるなかはくどからずつひ気もとけてさかづきの互の心くみかはす二世の契りぞうらやまし/\。
*その他の情報 [#v58e87b0]
文化13年(1816)5月
*関連項目 [#o5eac249]
*タグ [#qe9eda18]
*分類番号 [#b813f23f]
00-1331211-a2t5n5s1-0001
RIGHT:清元 糸の五月雨 歌詞