#author("2016-10-21T11:26:44+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
#contents
*題名 [#r492ddf4]
納豆売(なっとううり)
*変化物としての題 [#f7f0b5fe]
月雪花蒔絵の巵(つきゆきはなまきえのさかづき)
*詞章 [#k2b41973]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#s83b691f]
(資料の題名『月雪花蒔絵の巵』) 

(桜田左交述)

『風に随つて、しいて柳花の舞を学ぶと、異国の〔合〕人の詩も〔合〕木毎に花ぞと詠じける、我が敷島の言の葉も〔合〕いづれ眺めは変りなき、面白妙にいざさらば
『雪見に船と朝まだき〔合〕浮れ鴉に〔合〕起されて〔合〕眠い所を奇妙とは、世事と勤に湯帰りの〔合〕足駄も怪我に転ばすや、むきな芸者で立て通す
『世すぎ身過を合せて見れば〔合〕七ツ起してナト納豆〔合〕たゝき納豆と〔合〕他処はまだ、夢の内から〔合〕売場先〔合〕コリヤモシとんだお早いね〔合〕扨は朝湯でお磨きの、うまく何処ぞへおくはせに
『イエなんのまあ、そんな厭身は断りや
『エヽいかさま小町の因縁が、わかつておしや穴かしこ〔合〕
『遠慮も納豆に葱陳皮、芥はよしか吉原へ、まぐれて今朝の市戻り
『延喜でいつも買物の、道から無理に引張られ、今日もゑてめが居なんしと、とめる其の手をよい気さと、連を残して後朝に〔合〕
『雨が降るとて居続の
『所を雪に帰るとは、しまりの小口と我ながら〔合〕思案あり顔鼻の先、氷らせてこそ歩み来て
『コリヤアいつもの納豆屋さんか、何といゝ物が降つたぢやアないか
『何のよい物どころか、私等には冷たいものさ
『モシお前は市帰りの持起し酒、よい機嫌で今お帰りかへ
『サアとんだ奴に引掛かつて、夕べの酒の腹塩梅
『モシ其の腹直しには商売物の納豆汁
『コレサお前が一緒に行くなら用心して、内ぢやアてつきりこれ/\が
『何置きやアがれ
『イエ置きやすまいもし
『斯うあらうとは始めから〔合〕思ふて居ても真実と、言はれて鈍き女気に
『ほんに腕へ〔合〕入黒子、互に名をば堀の内、御願かけたり〔合〕人に人
『やつと一所になつてまだ、間もないに市へ行き〔合〕
『泊りがけぢやの何ぢやのと、内ぢやよもやと夜ひと夜を、今か/\と〔合〕明の鐘、
『そこれをやはらでコレ野暮め
〔二上り〕『登り夜船の櫂や艪ぢやとて、梶をとつたへ〔合〕佐田や牧方淀、水に車がくる/\と、伏見へ着くへ
『オヽイ/\親爺殿、其の金此方へ貸して呉れ、与一兵衛仰天し、イエ/\金では御座りません
『娘化粧すりや狐が覗く
『賽の河原の地蔵尊
『一つとや一ト夜あくれば賑かで/\、飾りたてたる
『松一ト木かはらぬ
『色の世界に色なきものは
『わしとかゝさんと糸取て居たにとのことよの〔合〕
『東上総のいちみの郡〔合〕村の古名をば金、沖に見ゆるは肥後様のへ、ソレ/\船よ紋は九ツ九曜の星
『蝶々とまれや菜の葉がいやならよしの先へ〔合〕とまらんせ
『ざれが嵩じて高声の
『オツト口舌に取なして
『もしや夫かとこちや出て見れば、味なぞめきの格子先
『奇妙頂礼騒げ/\、六人一座で〔合〕おしめ初買根よくどなたも〔合〕逢見ての後いちしゆ礼拝
『チトあちらへと比翼の枕、紋日物日の約束かけて〔合〕
『とても洒落るなら大きなこと言やれ〔合〕名ある芸者たちよ皆総揚に〔合〕
『五町残らず皆見世ひかせ、大門打せ、〔合〕
『遣手末社に惣花ざく/\〔合〕黄金の雪が降つて来たさうだ、コレ箕をもつてすくへ/\、こいつはたまらぬ奇妙頂礼大きな事まき出した〔合〕すてきな大尽ぢや
『恋にや誰しも〔合〕上の空、酒で乗出す総長屋〔合〕
『船でヤレコレコリヤ神いさめ〔合〕
『エヽ頼むにへ龍神さん〔合〕扨またうつゝい〔合〕乙姫さん、水の底まで手は届かねど、書いてやるぞへ投げ文を〔合〕よへ〔合〕紙は何紙油紙、小石を包んでどんぶりこ、そりや/\〔合〕つむりは当ります
『儘よ〔合〕浮名が龍の宮へ〔合〕面白や
『話に雪もとけしなき、道をたどりつ打つれて、姿も花の一ト節に、語り伝へて残しける
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#t8eeca4f]
(目次・本文の題名『月雪花蒔絵の巵(納豆売)』)

(作者 桜田左交)

「風に随つて柳花の舞を学ぶと異国の人のからうたも。木毎に花ぞと詠じける我敷島の言の葉もいづれ詠はかはりなきおも白妙にいざさらば
〔粂三郎出〕「雪見に船と朝まだきうかれ烏に〔合〕おこされて〔合〕ねむい所を奇妙とはせじとつとめに湯帰りの足駄もけがにころばずやむぎな芸者で立て通す
〔團十郎出〕「よすぎ身すぎをあはせて見れば〔合〕七つ起きしてナトなつとう〔合〕たゝき納豆と〔合〕よそはまだ夢の内から売場先〔合〕コリヤもしとんだお早いね扨は朝湯でおみがきのうまくどこぞへおくはせに
「イエなんのまそんないやみはことはりや
「エヽいかさま小町のいんねんがわかつておしや穴かしこ遠慮もなつとにねぎちんぴからしよしか吉原へまぐれて今朝の市もどり
〔三津五郎出〕「ゑんぎでいつも買物の道から無理に引張られけふもゑてめが居なんしと留るその手をよい気さと連を残して〔合〕きぬ/゛\に〔合〕
「雨が降るとて居続けの所を雪に帰るとはしまりの小口と我ながら思案あり顔はなの先こふらせてこそ歩み来て
〔三津〕「コリヤいつもの納豆屋さんかなんといゝ物が降つたじやないか
〔團十郎〕〕「なんのよい物どころかわたしらにはつめたい物さ
〔粂三郎〕「モシお前は市帰りの持こし酒よい機嫌で今お帰りかへ
〔三津〕「ナアとんだやつに引かゝつてゆふべの酒のはらあんばい
〔團〕「モシ其腹直しは商売の納豆汁
〔粂〕「コレサお前が一緒に行なら用心して内じやてつきりこれ/\が
〔三津〕「ナニおきやがれ
〔粂〕「イエおきやすまいモシ
「こふあらふとははじめから〔合〕思ふて居ても真実といはれてのろき〔合〕女気に
「ほんにかいなへ入ぼくろ互に名をばほりの内御願かけたり〔合〕人に人
「やつと一緒になつてまだ間もないに市へ行きとまりがけじやのなんじやのと内じやよもやと夜一夜を今かくと〔合〕あけのかね〔合〕
「そこらを和らでコレ野暮め
〔二上り〕「のぼり夜舟とかいや櫓じやとて梶をとつたへ〔合〕佐田や平方よど水に車がくる/\とふし見へつくへ
「ヲヽイ/\おやじどのその金こつちへかしてくれ与一兵衛仰天し
「イエ/\金ではござりません娘化粧すりや狐がのぞく
「塞の河原の地蔵尊
「一つとや一夜明ればにぎやかで/\かざり立たる
「松一木かはらぬ色の世界に色なきものは
「わしとかかさんと糸とつていたにとのごとよの〔合〕
「東上総のいちみの郡村の小名をばかね
「沖に見ゆるはひご様のへソレ/\船よ紋は九つ九曜の星
「てふ/\とまれや菜の葉がいやならよしの先へとまらんせ
「ざれがこうじて高声の
「ヲツトくぜつに取なして
「もしやそれかとこちや出て見ればあじなぞめきの格子先
「帰命頂礼さはげ/\六人一座で〔合〕おしめ初買こんよくどなたも相見ての後いろじゆらいはい
「チトあちらへと比翼の枕紋日物日の約束かけて〔合〕
「とてさうもしやれるなら大きな事いやれ〔合〕名ある芸者たちよ皆総揚に〔合〕五町残らず皆見世引せ大門打せ〔合〕やりて末社に総花ざく/\〔合〕黄金の雪が降つて来たそふがコレい箕を持てすくへ/\こいつはたまらぬ〔合〕帰命頂礼大きな事まき出したすてきな大尽じや
「恋にやたれしも浮のそら
「さけで乗出す総長屋
〔二上り〕「ふねで〔合〕ヤレコレこりや神いさめ〔合〕
「エヽたのむにへ龍神さん〔合〕扨又うつつい〔合〕乙姫さん水の底迄手はとゞかねど書いてやるぞへなげぶみをよへ紙はなに紙あぶら紙小石なくるんでどんぶりこそりや/\つむりへあたります侭よ浮名がたつのみやへおもしろや
「はなしに雪もとけしなき道をたどりつ打つれて道をたどりて急ぎ行く。
*その他の情報 [#ge247253]
文政10年(1827)4月初演 二世桜田治助作詞 初世清元斎兵衛作曲
*関連項目 [#j15d8571]
*タグ [#gb991e1e]
#変化物
*分類番号 [#fa960fa8]
00-1331211-n1t3t5a3-0001
RIGHT:清元 納豆売 歌詞