#author("2016-10-21T11:02:44+09:00","default:Tomoyuki Arase","Tomoyuki Arase")
#contents
*題名 [#jfeffc1b]
明烏(上)(あけがらす(じょう))
*本名題 [#sc37e0bd]
明烏花濡衣(上)(あけがらすはなのぬれぎぬ(じょう))
*詞章 [#z6eb6d52]
**声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年) [#qaab7bf8]
(資料の題名『明烏花濡衣』)
(資料目次に括弧書きで「浦里時次郎」とある)

『白雪の、積るも恋にたくらべて、解けぬ思を浦里が、何うした縁で彼の人に、逢ふた初手から可愛さが、身に染み/゛\と惚れ抜て〔合〕あけて口惜しき鬢の髪、撫上げ/\
『浦里モウ誰もさし合はないかや
『見世が出たれば今の間は、誰も来ることでは御座んせぬわいナ
『ヤレ/\此の広い二階に身ひとつの、置所のないと言ふは、ア因果な身になつたことぢやナア
『サア此の様に堰き堰かれ、嘸気詰りで御座んせう、夫を堪へて下さんすも、みんな私が可愛いと思ふてのお意志、嬉う御座んす忝けないわいナア
『歎きしずめば否〔合〕己故の此の苦労、免してたもと言葉さへ、泣の涙に暮れけるが
『いつまで斯うして居たとても、限もなき二人が中、長居する程そなたの身詰り此の程段々話す通り、カノお人へ色々手を廻し、言入れても叶はぬ望と、願書までも突戻されし身の本意なさ
『そなたも共にと言ひたいが、いとしそなたに手を掛て〔合〕どうなるものぞ長らへて、我が亡き跡で一遍の、回向を頼むさらばやと、言捨立つを
『取ついて、あんまりむごい情なや、今宵離れてこなさんの、健で居さんす其の身なら、又逢ふことのあらうかと、楽しむ事のあるべきが
『かねて二人が取換す、起請誓紙はみんな空
『どうで死なんす覚悟なら、三途の川も是此の様に、二人手を取り諸共と
『何故に言ふては下さんせぬ、殺して置いて行んせと、男の膝にすがりつき、身を慄はして泣居たる
『遣手の萱が声として
『子供や緑やア誰も居ないのか、オヽ浦里さん
『アイ/\お萱どん、何の用で御座んすへ
『外の用でも御座んせぬが、昨夜から居続の客人、ありや何処のお方で御座んすへ
『サア何処やらの御子息さんぢやと言ふ事で御座んす
『イヱ/\さうは抜させぬ、慥に堰かれたアノ時次郎、サア旦那さんが呼んでぢや程に、サア御座んせ
『コレお萱どん何卒免して下さんせ
『エヽまだるい/\そんな甘口できく奴ぢやアねへ、サア己と一所にうしやがれ
『罪も報も後の世も、白髪頭の米噛も、張きるばかりのやら腹立ち、引立てゝこそ降りにける
『跡に大勢男共、屏風の内の時次郎、無二無三に引出し、踏むやら打つやら叩くやら、直に戸外へ突出し、門の戸はたと締にけり
**国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」 [#ba803693]
(目次の題名『明烏花濡衣(明烏)』本文の題名『明烏花濡衣(あけ烏)』)

「白雪のつもるも恋にたくらべて。とけぬ思ひを浦里が〔合〕〔文七ブシ〕「どうした縁でかの人に。あふたしよてから可愛さが。身にしみ/゛\とほれぬいて〔合〕あけてくやしきびんの髪なであげ/\
〔團十郎〕「浦里モウたれもさし合はないかや
〔しうか〕「見世が出たれば今のまは誰も来る事ではござんせぬわいナ
〔團〕「ヤレ/\此広い二階に身ひとつの置所ないといふはアヽ囚果な身に成つた事じやナア
〔しうか〕「サア此やうにせきせかれさぞ気づまりでござんせう夫をこらへて下さんすもみんな私がかはいと思ふてのお心ざし嬉しうござんす忝けないわいナア
「抱きしむればいや〔合〕おれ故と引しめて。物をもいはずしめあひて跡は泪にくれけるが
〔團〕「いつ迄こうして居たとてもかぎりもなき二人が中長居するほどそなたの身づまり此程だん/\咄す通りカノお人へいろ/\と手を廻し言入れても叶はぬ望みと願ひ書迄もつき戻されし身の本意なさ
「そなたも共にと言ひ度いが。いとしそなたを手にかけて〔合〕どうなるものぞながらへてわがなき跡で一遍の回向を頼むさらばやと言捨て立つを
「取ついて〔カン〕あんまりむごい情なや今宵はなれてこなさんのまめで居さんす其身なら又逢ふ事のあらふかと楽しむ事もあるべきが
「兼て二人が取かはす起請誓紙はみんなあだ
「どふで死なんす覚悟なら三途の川もこれ此やうに二人手をとり諸共と
「なぜにいふては下さんせぬ殺して置いて行んせと男の膝にすがりつき身をふるわして泣き居たる
「やりてのかやが声として
〔文五郎〕「子供やみどりやア誰れも居ないのかヲヽ浦里さん
〔シウカ〕「アイ/\おかやどん何の用でござんすへ
〔文五郎〕「外の用でもござんせぬがゆふべから居続けの客人ありやどこのお方でござんすへ
〔しうか〕「ナアどこやらの御子息さんじやといふ事でござんす
〔文五耶〕「イエイエそうは抜させぬ慥かにせかれたアノ時次郎サア旦那さんが呼んでじやほどにサアござんせ
〔しうか〕「コレおかやどんどふぞゆるして下さんせ
「エヽまだるい/\そんなあま口できくやつじやアねヘサアおれと一緒にうしやがれ
「罪も報ひも後の世も白髪あたまの米かみも張りきる計りのやら腹立引立てこそ降りにける
「跡には大勢男共其屏風の内の時次郎むざんに引出し踏むやらぶつやらたゝくやら直におもてへつき出し門の戸はたとしめにけり。
*その他の情報 [#l28e7abf]
嘉永4年(1851)2月初演 三世桜田治助作詞 清元太兵衛作曲
*関連項目 [#w2a86755]
[[明烏花濡衣(下)(清元)]]
*タグ [#b27118c9]
*分類番号 [#ja6dc09a]
00-1331211-a1k4g1r1-0001
RIGHT:清元 明烏(上) 歌詞