題名

明烏(上)(あけがらす(じょう))

本名題

明烏花濡衣(上)(あけがらすはなのぬれぎぬ(じょう))

詞章

声曲文芸研究会『声曲文芸叢書』第3編 清元集(明治42年)

(資料の題名『明烏花濡衣』)
(資料目次に括弧書きで「浦里時次郎」とある)

『白雪の、積るも恋にたくらべて、解けぬ思を浦里が、何うした縁で彼の人に、逢ふた初手から可愛さが、身に染み/゛\と惚れ抜て〔合〕あけて口惜しき鬢の髪、撫上げ/\
『浦里モウ誰もさし合はないかや
『見世が出たれば今の間は、誰も来ることでは御座んせぬわいナ
『ヤレ/\此の広い二階に身ひとつの、置所のないと言ふは、ア因果な身になつたことぢやナア
『サア此の様に堰き堰かれ、嘸気詰りで御座んせう、夫を堪へて下さんすも、みんな私が可愛いと思ふてのお意志、嬉う御座んす忝けないわいナア
『歎きしずめば否〔合〕己故の此の苦労、免してたもと言葉さへ、泣の涙に暮れけるが
『いつまで斯うして居たとても、限もなき二人が中、長居する程そなたの身詰り此の程段々話す通り、カノお人へ色々手を廻し、言入れても叶はぬ望と、願書までも突戻されし身の本意なさ
『そなたも共にと言ひたいが、いとしそなたに手を掛て〔合〕どうなるものぞ長らへて、我が亡き跡で一遍の、回向を頼むさらばやと、言捨立つを
『取ついて、あんまりむごい情なや、今宵離れてこなさんの、健で居さんす其の身なら、又逢ふことのあらうかと、楽しむ事のあるべきが
『かねて二人が取換す、起請誓紙はみんな空
『どうで死なんす覚悟なら、三途の川も是此の様に、二人手を取り諸共と
『何故に言ふては下さんせぬ、殺して置いて行んせと、男の膝にすがりつき、身を慄はして泣居たる
『遣手の萱が声として
『子供や緑やア誰も居ないのか、オヽ浦里さん
『アイ/\お萱どん、何の用で御座んすへ
『外の用でも御座んせぬが、昨夜から居続の客人、ありや何処のお方で御座んすへ
『サア何処やらの御子息さんぢやと言ふ事で御座んす
『イヱ/\さうは抜させぬ、慥に堰かれたアノ時次郎、サア旦那さんが呼んでぢや程に、サア御座んせ
『コレお萱どん何卒免して下さんせ
『エヽまだるい/\そんな甘口できく奴ぢやアねへ、サア己と一所にうしやがれ
『罪も報も後の世も、白髪頭の米噛も、張きるばかりのやら腹立ち、引立てゝこそ降りにける
『跡に大勢男共、屏風の内の時次郎、無二無三に引出し、踏むやら打つやら叩くやら、直に戸外へ突出し、門の戸はたと締にけり

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

(目次の題名『明烏花濡衣(明烏)』本文の題名『明烏花濡衣(あけ烏)』)

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

分類番号

00-1331211-a1k4g1r1-0001
データ入力日:2016/05/17

清元 明烏(上) 歌詞