題名

造釻菊睦言(つくりものきくのむつごと)

別題

菊畑の三勝(きくばたけのさんかつ)

詞章

国書刊行会『徳川文芸類聚』 俗曲上 第九 「柏葉集」

(目次の題名『造釻菊睦言(菊畑三勝』本文の題名『〔浅からず思ひそめ井のうゑき屋に〕造釻菊睦言(菊畑の三勝)』)

(作者 篠田瑳助)

「常磐の松と契りしも〔合〕今は仇なるむつ事と。なるも金ゆゑ。色ゆゑに〔合〕身をかきいれの文のせめ〔合〕思ふに添はで思はぬに。なげのなさけを。こりもせで。逢瀬をまつとゆふ月の。身は空蝉の足元は。跡にひかるゝみだれ髪
〔長十郎〕「モシ蘭の方様この菊の花も美う咲乱れて居るゆゑこんな花はあるまいと思ふうち。いつか人のながめとなるあだ腹の立つ菊の花
「人の心も知らず花によそへし今のあてごと思はぬ人のながめとなり手折らるゝ辛抱も其あだ人に近寄つてねまの様子をイヤサ菊はふびんなものじやわいの
「そんなら手折らしてその人のハテナア
「金のかはりに女房になれとせがみ立られ返事もならず
「となり座敷でひきうたふアノ唱歌三勝とやらが半七に受あふた金の日ぎりどうしやうと思ふうち意地のわるい善右衛門がかねの権威の無理くどき
「思はざりにしこの恥辱今のこの身はすてぐさや二人が。縁をさつぱりと。切つてもきれぬ。うき草やよるべ定めぬ恋の闇
「けがらはしい事ながら善右衛門に身を任せ枕かはしたばかりに日頃の望みも叶ふたじやござんせぬか弥七さんサア半七が心には何と思ふてゐやるやら
「されば名をとらふより得の世の中尾羽うちからした浪人より当世ときめく善右衛門に従ふがよいはいの
「三勝取付きのふ。情なや。これが世間にありふれた〔合〕 色や浮気じや〔合〕あるまいししよてから知らず知らぬ同士〔合〕それいつぞやの巳待の日〔合〕〔カン〕人目の関を不忍の蓮見の折の雨やどりふつと見かはす目づかひに〔合〕しめからむ手もどこやらがぴつたり。ぬれたあせのあや。ふかいゑにしじや〔合〕ないかいなうれしい縁を神さんが。ひよんなお世話のその後に。先の男と。添ふ心なら。なんのかうした話はしましよ
「どうぞ疑ひはらしてほんの女夫と言ふて下さんせと三勝が定めて言つたであらうわい
「そんならかたきイヤサ金がかたきの善右獄門が心のおくの間知らんがため「金を調べ半七に手渡ししたいばつかりに
「スリヤそれゆへに天晴貞女な三勝じやナア
「最早此世にあきの月あらしの雪と散る花の浮名は石碑に残るらん。

分類番号

00-1331211-t3k3r2m5-0001
データ入力日:2016/06/03

清元 造釻菊睦言 歌詞